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坪倉由美の日々しましま

(2)うっかり八兵衛
 四十八歳、です。逃げも隠れも詐称もいたしません。最近、本当にうっかりが多くなってきました。
 先日もハトムギ茶のティーバッグを煮出していて、出来上がりを耐熱のガラスポットに注いだらいつもより色が薄い。「あれ? 煮出す時間が足りなかった?」。ポットをのぞくと、かすかに和風だしの香りが。やかんに放り込んだのは、かつおだしパックでした。
 ちょっと前の私なら、このままどんどん(時代劇「水戸黄門」に登場する)うっかり八兵衛化するのではないかと、人知れずブルーになったりしたのです。今やいちいち落ち込んでいたら身が持たなくなるほどの八兵衛ぶり。淡々とだしを別の容器に移し替え「今夜の夕食は鍋やし」と誰も問わないのに一人答えます。
 またはある日、スーパーの精算レジで財布に入っているはずのその店のポイントカードを探すとき。銀行や他店のポイントカードに紛れてなかなか見つからない。
 若い男の店員さんは口元に笑いを浮かべ忍耐強く待ってくださいます。後ろに並ぶお客さんから「並んでる間に出しときぃな」の視線が痛く、突き刺さすよう…。
 視線に負けて「わ、忘れました(ホンマはあるねん!と心は叫ぶ)」。すると店員さんが申し訳なさそうに「あの〜、そこに見えてるんですけど」
 彼の指さす所を見ると財布のカードスペースの一番手前で一番見えやすい所に「どや!」って感じでカードはありました。
 財布を取り上げて、自分でサッサと出してしまえたら、どんなにか楽だっただろうに。ごめんなさい、おにいさん!
【2007年11月15日掲載】