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坪倉由美の日々しましま

(8)ウチは写真屋
 実家は写真屋です。八十歳の父が今も現役で営み、母も手伝っています。私が子供のころ、カメラを買うのもフィルムの現像焼き付けも写真屋でしかできませんでした。スーパーやコンビニでもそれらを扱うようになり、そこへデジカメとパソコンの普及。したがって両親の写真屋の商いはボチボチでのんびりです。
 母がもともと花好きだったこともあり、一年ほど前から花屋の知人に勧められ、店先で花の苗を売るようになりました。小さなスペースなので置ける苗の種類も数もわずか、三十個も置けばいっぱいになります。
 ところが思いのほか、これがよく売れるのです。店先に花があると活気が出るし、お客さんとの花談議も楽しい。何といっても自分たちの目利きで仕入れたモノが売れるのはおもしろい。ボチボチの本業より、気合が入るのは致し方ありますまい。
 休日にウチの家族と鳥取の温泉へ、車で一泊の旅に行きました。道中、両親は車窓に花の問屋を見つけてしまいました。旅館に着いて温泉につかり、上げ膳(ぜん)据え膳でお料理をいただいても、その問屋が頭から離れません。
 翌日の観光には当然のごとく花問屋が組み込まれました。才覚?をフルに発揮した両親、家に帰り着いた母の開口一番は「ええ苗が買えてよかったなぁ、お父さん」(温泉に行ったんとちゃうん?)。
 はるばる鳥取で仕入れた苗はほぼ即日完売。店主の気合は正直に反映されるのか、ある日、花を買った初老のご婦人が言いました。「ここ、前は写真屋さんどしたなぁ」。いえいえ、まだやってます。ボチボチですけど、がんばってます。どうぞよろしゅうに。
【2007年12月27日掲載】