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坪倉由美の日々しましま

(9)酢昆布病
 友人が「今これにはまってるネン」と小袋に入った酢昆布を三つアトリエに持って来てくれました。なんでもわざわざ大阪からどっさりと取り寄せているらしく、友人いわく「一度袋を開けたら止まらない」ンだそうです。
 たしかにまろやかで食べやすい酸味です。早速、一袋を同じビルにアトリエを持つ、おしゃれな布作家のヒサコさんにおすそ分け。「酢昆布は好物」と喜びながら、ある体験を聞かせてくれました。
 数年前、飼犬の散歩の途中にご近所さんから酢昆布をもらいました。何十年ぶりかで口にし、しみじみおいしかったそうです。その日からヒサコさんは酢昆布のとりこになりました。
 四六時中口にし、常備は欠かさない。次第に市販品の軟らかさが物足りなくなり、板状のだし昆布を短冊に切り、自家製酢昆布を作るまでに。うっかり切らすと大変、あわてて錦商店街に買いに走ります。店先のその場で口にしたい衝動はどうにかこらえますが、帰宅途中の道端で自転車にまたがったままかぶりついたそうです。
 そんな日々が半年ほど続き、いくらなんでも食べ過ぎかもと案じ出したころ、なぜか突然、つき物が落ちたように酢昆布から解き放たれます−。
 その話をしながらもおすそ分けの酢昆布はみるみるウチにヒサコさんの口に運ばれ、その場で完食。再発したのではあるまいかっ! 私はひそかに恐れました。
 もう一人心配なのはこれにハマってると機嫌よく持って来てくれた前出の友人。「袋を開けたら止まらない」それって、もしかして? 恐るべし、酢昆布!
【2008年1月10日掲載】