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坪倉由美の日々しましま

(15)思い出し笑い
 友人とばったり出会い、たまたま時間に余裕があると、立ち話に花が咲きます。思いがけず重い話になる時もありますが、楽しい話で盛り上がると、その場を去りがたく、ついつい時間が長くなってしまいます。
 ようやく「ほな、また」で別れても、今し方の会話が頭から離れず、クスクスと思い出し笑い。「道行く人に見られたら妙に映るかも」とこらえようとするのですが、そんな自分がおかしく、さらに笑ってしまいます。
 中学生の息子も家でよく思い出し笑いをします。「何を笑ってるのん?」と聞くと「小学校の時にな…」と思い出のおもしろ話をします。「えらい昔の話やなぁ」と、ややちゃかしながら聞くのですが、さらにさかのぼり、保育所時代のことを昨日のことのように思い出して吹き出す時もあります。若い脳がつかさどる記憶は私より何倍も鮮明なのでしょう。
 息子は自己表現が苦手で人とのコミュニケーションが得手ではありません。中学生になり、息子なりに思いや考えの伝達方法を工夫したり、理解してくれる人も増え、学校生活も安定し出しましたが、小学校時代はよくいじめられたり、心ない言葉を投げかけられたりしました。しんどい思いや傷ついたりもしただろうに楽しい思い出も彼の心にちゃんと残り、今も振り返って笑えるのはステキなことでこちらもうれしくなります。
 息子に限らず、人は今の状況が「まぁまぁええ」からこそ、楽しいことはそれがずっと昔でも、ついさっきでも「思い出して笑える」のだと勝手に解釈しています。一人笑うさまはハタから見ればヘンテコでも、私にとっては今の自分の調子が計れる大切なバロメーターなのです。
【2008年2月21日掲載】