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坪倉由美の日々しましま

(17)肥満道、ばく進中
 ほんまにこの冬は寒かった。自宅からアトリエまで自転車で十五分。入室してすぐに暖房を入れても、築四十年の鉄筋コンクリートの雑居ビルの一室はなかなか暖まらず、自転車で冷えきった体はしばらく固まったままで、なかなか稼働しません。
 「歩いてみたらいいかも」。ある朝、ふと思い実行してみました。時間は自転車のほぼ倍近く、三十五分ほどかかるのですが、アトリエに着くころには、ほどよく体が温まり、血行が良くなっているのが実感できます。すぐに動けて効率も良く、運動不足も軽減。なんで今まで、こんなにええことを思いつかなかったんでしょう。
 せっかくのええことを、ここ一カ月できる限り続けているのですが、もともと豊かな食欲がさらにアップしました。アトリエでは基本的に一人で、気ままなのをいいことに、正午にもならないうちからお弁当を広げるようになり、おやつ時にはあられやクッキー、腹持ちのいいモノをつまんでしまいます。
 食べ盛りの息子は私が帰宅するなり「お帰り」も言わず「今日の晩ご飯、なに?」と聞きます。以前はその言葉にあおられて大急ぎで夕食を作っていました。最近は何より自分のお腹が辛抱できずの速攻調理。
 しっかり食べたはずの夕食後、公共料金を支払いにコンビニへ行くと、以前は目にも留まらなかったレジ横のケースに入ったあんまんが、湯気を立てて私を誘います。自分にだけは後ろめたく、息子にもカレーまんを包んでもらいながら、親子で肥満道を歩くどころか、転がっていく姿が目に浮かぶ。ああ、ええことづくしは難しい。
【2008年3月6日掲載】