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「墓編」

家族観変容 継承に揺らぎ
秋の彼岸に墓参りする女性。墓を代々継承していく基盤が今、揺らいでいる(2010年9月20日、大谷祖廟)

 アンケート「墓編」では、「自分が埋葬される予定の墓がある」と答えた人は回答者の8割近くに上った。「生前に墓を建てるのは縁起が悪い」との考えもあるが、墓が「ある」と答えた人の34%は自分で建立している。両親などのために建てた墓もあるとみられるが、生前の墓建立に対する前向きな考えが広がりつつあることを示す。

 墓の購入価格を尋ねたところ、数十万〜500万円と幅があったが、中心は200〜300万円台。墓がある人のうち5%は「墓地のみ購入」と回答、「近隣によい場所が見つかった時に墓地を購入したが、墓石の建立は何かきっかけがないと難しい」(草津市の60代男性)のように、墓石の建立をためらう人もいるようだ。

 墓の場所は、約半数が寺を挙げたが、続いて多かったのは地域の共同墓地(26%)。公営墓地(10%)や民間墓地(8%)を上回る結果からは、地域コミュニティーの健在ぶりもうかがえた。

 だが「予定されている墓への埋葬を望むか」には「いいえ」「分からない」を合わせて17%。「墓は嫁を家の女として縛り付けるもの」(城陽市の60代女性)、「嫁ぎ先の墓には入りたくない」(守山市の60代女性)などの記述もあり、女性の家族観が変容しつつある様子が読み取れる。

 独身女性の回答では「先祖代々の墓が自分の代以降は無縁墓になる」の声も。家族の形が多様化する中、昔ながらの家族制度を前提としてきた墓の維持は困難になりつつあるようだ。

散骨や樹木葬、選択肢に

 墓地以外に望む埋葬法を尋ねる質問には34人が回答。うち3分の2の23人が「散骨(自然葬)」を上げた。墓がある人でも「一部は散骨もしてほしい」(大津市の60代男性)、「私は樹木葬を望んでいるが、難しい」(湖南市の60代女性)と記し、関心は高いよう。

 墓の継承者がいる人は67%。だが、いる人の中にも「長男に子がなければ継承者がいなくなる。墓をつくってよかったのか…」(大津市の60代男性)と悩む声も。いない人からは「母が建てた墓をなくすことはできるのか」(40代男性)との疑問も寄せられた。

 無回答も全体の4分の1と多く、「長男がいるが意思を聞いたことがない」(守山市の70代女性)、「子どもが関東在住なので大丈夫か」(野洲市の60代男性)などの記述からは、従来の「継承者」が当てにできない不安が読み取れる。代々継承してゆくものという墓本来の考え方も揺らぎつつあるようだ。

<回答者の声> 「必要ないが、遺族が困る」

◇墓について、どう考えますか=自由回答から

 「家族が参りやすいマンション式墓地を希望」(京都市・60代男)
 「できれば直葬に。墓も位牌(いはい)も一切いらない」(京都市・70代女)
 「娘ばかりで墓が続かない事は見えている」(京都市・50代女)
 「本家墓に夫の弟夫婦の埋葬を認めていいのか悩む」(京都市・70代女)
 「子どもの考えに任せたい」(長岡京市・70代女)
 「東京に墓がある。守り続けてきたのは長男で、いまさら入れない」(木津川市・80代男)
 「墓の立派さがその家の財産を左右するような考えは疑問」(京丹後市・70代女)
 「残された家族に負担がかからないよう、散骨でもよい」(京丹後市・70代女)
 「墓はいつまで守れば許されるのか」(草津市・60代男)
 「墓にまで格差があるのが気に入らない。統一的なものにならないのか」(大津市・60代男)
 「墓を子どもの近くに作ろうか郷里にしようか迷っている」(草津市・60代女)
 「子どもがいないので墓を寺に返したい。いつごろ返せばいいのか」(大津市・60代女)
 「妻の実家の墓を見る人がいなくなる。それぞれの墓を一括管理できないか」(大津市・60代男)
 「自分は墓は必要ないと思うが、遺族が困るのでは」(大津市・60代男)
 「使用料を払って墓を用意したが、継承者なく、墓石と遺骨は将来どうなるのか」(草津市・60代男)
 「永代供養してくれる先を模索中」(草津市・60代男)

永代から有期限の考え方も

京都女子大現代社会学部 槇村久子教授

 アンケートで「墓の継承者がいるか」の質問に対して未回答が多いのは、子どもはいるけど墓を継承してくれるか分からないという不安の表れでは。

 少子高齢化に加え、人口減少の時代に突入した。好むと好まざるとにかかわらず、墓の継承者がいなくなるのは大きな流れ。核家族で子は一人が多い。しかも、親と同じ土地で暮らすことは少ない。未婚率も高くなっている。家族はどんどん小さくなってきている。

 墓を出身地から住んでいる場所に移す「改葬」をしても、また次の世代がその墓を継承してくれるとは限らない。土地付きの墓を継承するのは難しい。

 「○○家」の墓ではなく、「ありがとう」などの墓碑銘にすると、嫁いだ娘も入りやすくなる。東京では、同じ墓地や納骨堂に入る予定の人たちが勉強会などを通じ、「墓友」になっていく例もみられる。

 今、墓のことを考えているのは団塊の世代やその上の世代。下の世代は墓自体を考える余裕はないし、価値観が異なる。合葬や散骨という選択肢も出てくる。墓は永代まで継承するものではなく、25年や50年と有期限とする考え方もある。

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【2011年1月22日掲載】