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(3)墓の継承

嫁いだ娘、長男夫婦に重荷
父親の墓にお参りする伊藤さん。墓は真新しく、立派だが、継承に不安が残る(京都市内)

 散骨について京都で20年近く勉強会を続けている「散骨を考える会」。事務局を担当する伊藤まゆみさん(62)=大津市=は「墓がなくても、どこでも故人をしのべる」と思っている。だが今、実家の墓の継承問題に頭を悩ませている。

 墓は京都市内の寺にある。5年前、老いた父親が自ら建てた。長男でもなく、核家族で檀那(だんな)寺もなかったが、自宅から歩ける距離にある墓地を見つけた。

 当時、父親から「墓をつくったんやけど」と遠慮がちに言われた。そのとき「お父さんが気に入ったのだったら反対しないよ」と応じたのは本心だった。

 翌年、父親は92歳で死去。自分で選んだ墓で眠っているが、伊藤さんはしばらくして、ふと不安がよぎってきた。「このお墓は誰が守っていくの?」

 3人きょうだいだったが、長兄はすでに他界し、その息子とは疎遠だ。伊藤さんには婚家の墓がある。姉夫婦は墓を持っていないため、墓の継承を持ちかけてみたが、義兄の返事は「要らない。納骨堂でいい」と素っ気なかった。

 母親は高齢で足が不自由となり、今では夫の墓参りにも思うように行けない。「じゃあ、何のためにお墓はあるの。残された娘2人はどうしたらいいの」。伊藤さんの答えは出ない。

 土地付きの「墓」は住宅のように中古で売却できない。誰が守っていくのか。将来を見据えると、墓の存在が重荷となってくる。

墓の継承、費用が問題 心込め手元供養で代える

グランドピアノ型の手元供養。ふたの部分が開いて遺骨を納められる。石造りでずっしりと重い(大津市)

 リビングにある小さなピアノ型の置物。大津市のヨシエさん(36)=仮名=が中を見せてくれた。ぴったり収まった袋には、昨春亡くなった義父の遺骨が入っている。

 「義父も夫も長男。でも私たち夫婦は墓を継ぐことはできませんでした。これが私たちの答えです」

 嫁ぎ先の墓に初めて参ったのは、結婚して間もなく。京都市内の共同墓地にある墓石は古びて傷んでいた。いつ建てられたのか、誰が墓地の管理者なのか分からない。「お墓、どうするの」。ヨシエさんは何度も夫に尋ねたが、返ってきた答えは「僕も分からへん」。義父も、墓に対しては無頓着だった。

 義父の遺骨を納めると、墓の継承者として管理費などもすべて負担しなくてはならないだろう。遺骨をまとめて墓を整理しようにも、かなりの金額が必要だ。「家」の墓を継承していくには費用の問題がのしかかる。

 「子育て世代の収入では今の生活で精いっぱい。墓の管理など、とても無理なのです」とヨシエさん。盆や彼岸の墓参は続けているが、義父を代々の墓地に葬るのは断念した。

 代わりに求めたのが手元供養。インターネットを見ながら悩み、自分が習っていたピアノのデザインを選んだ。戒名を受けず、位牌(いはい)も作らなかったため、義父を思い出す唯一のよりどころだ。手元に残した遺骨以外は深草墓園に合祀(ごうし)した。この遺骨も、将来、負担に感じるようになったら合葬するよう、子どもに託している。

 「今日は寒いねえ」。折に触れて話しかける。野球観戦が好きだった義父のために、中継が始まると「ピアノ」をそっとテレビの前に移す。ヨシエさんにとって生前よりむしろ義父が身近になったように感じる。

継承・分骨

墓を継承する手続きは墓地管理者によって異なる。印鑑証明などの公的書類が必要な場合も多く、ある民間霊園では「きちんと守り継いでくれるかを確認したい」との趣旨で書類の提出を求めているという。手元供養などで遺骨を分骨する場合は、京都市では市中央斎場で「分骨証明書」を発行しており、将来的に納骨する時に必要になる。
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【2011年2月18日掲載】