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(5)「都市化」

自宅より葬儀場利用、主流に
4年前にできた葬祭場。今では駐車場や控室などを完備する葬祭場での葬儀が主流になってきた(京丹後市大宮町・まごころ会館大宮)

 京都府北部の丹後半島を車で走ると、葬祭場があちこちで目にとまる。2004年に6町が合併して誕生した人口約6万の京丹後市には現在、「ホール」や「会館」と呼ばれる葬祭場が11カ所点在する。10年前には一つもなかった施設だ。

 「ここまで一気に転換するとは思わなかった。この1年で自宅葬を請け負ったのは1件かな」。2カ所の葬祭場を持つ「眞心(まごころ)葬祭」(同市峰山町)の社長尾上哲也さん(49)も驚いている。

 市が09年度、火葬場の整備計画に関連し、葬儀場所を調べたところ、葬祭場の利用が約9割にのぼった。旧久美浜町にある火葬場の利用者では、町内に葬祭場がなかった06年度は全て自宅葬だった。

 葬儀は旧来、故人の自宅を式場に、地域の「隣組」が執り行った。ふすまを取り払い、家具を移動させ、祭壇を置く。料理や酒を用意、テントを設け、僧侶の控室に隣家を借りることもあった。祭壇を自前で持つ地域もあり、隣組メンバーが組み立てた。勤めは当然のように休んだ−。

隣組の出番減り、省力化 「香典辞退」の兆しも

 「それが随分と省力化になりましたねえ」。駐車場の周りに雪が残る2月のある日、同市大宮町の葬祭場で、隣組の高齢男性の葬儀に参列した男性(70)はしみじみと話した。

 「昔は隣組で助け合った。いつか自分の家も世話になると思っていたから。今は手伝いに仕事を休んでもらうのに遠慮がある。時代の流れでしょうな」

 故人の自宅から棺を送り出したいという家族もいる。だが、今冬のような大雪では断念せざるを得ない。葬祭場は冷暖房完備な点も魅力だ。また、広大な駐車場も利点。自宅葬では参列者のマイカー用に近くの広場を借り、誘導員を配置しなくてはならなかった。

 式はスタッフの進行でスムーズに行われる。隣組の仕事は受付くらい。近所付き合いが薄れてきたようにも見えるが、「葬祭場の利用で、葬儀に専念できるようになった」と尾上さんは利点を上げる。「ゆっくりとお別れができた」といった声が寄せられるという。

 ちりめん産地の丹後地方は昔から京都市内の織物産業と結びつきが強いため、京都の「流行」を受けやすいとの指摘もある。

 葬儀は今でも香典を集める「共助」で行われる。地縁・血縁が根強く、参列者は多い。だが、式場が「都市型」になったのに伴い、喪主側から「香典辞退にしたい」「ごく限られた参列者の『家族葬』でやりたい」といった要望も出始めたという。そういった「簡素化」に、尾上さんは危機感も抱く。

 「故人と付き合いがあった人が香典を持ってお参りに来てくれたら、遺族はその人をずっと大切に思うはず。そういう絆まで薄れてしまう気がする」

 変容は葬儀だけでない。お盆やお彼岸の墓参の習慣すら崩れ始めている。

 市シルバー人材センターには「墓掃除」の依頼が毎年200件以上ある。特にお盆前に集中。依頼者は、ふるさとを離れて都会で暮らす人だけでなく、市民も多いという。

 事務局長の上川惇逸さんは「高齢化が大きな原因でしょう。都会から帰省もしにくくなる。墓はだいたい山の上にあるから、地元に住んでいても、なかなかお参りに行けない」と感じている。

 墓守に家族の手がまわらないのは、高齢化や人口減少がいっそう進む社会全体の近未来図かもしれない。

葬儀の場所

 日本消費者協会の「葬儀についてのアンケート調査」をみると、2010年(第9回)は「葬儀専用の式場」が全国で74.8%と圧倒的に多かった=グラフ参照。11年前(第6回)には30.2%だったのが急増してきた。逆に「自宅」は8.8%にすぎず、11年前より約30ポイント下げている。
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【2011年3月4日掲載】