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(6)永代供養墓

継承や維持の不安に応えて
3階建てビルになった永代供養納骨堂。外観からは内部の様子は想像もつかない(京都市東山区)

 観光客でにぎわう京都市東山区の円山公園近くに、改装工事真っ最中の3階建てビルがある。瓦屋根で石垣に囲まれた風変わりな建物は、間もなく開所予定の「永代供養納骨堂」だ。

 収容できる遺骨は2300柱。通常、地下20メートルの部屋に遺骨を納めた厨子(ずし)を収容、参拝時は地上フロアの祭壇に厨子を運ぶ。遺骨は三十三回忌を過ぎると堂内に合祀(ごうし)される。観光名所の立地や利便性、宗派を問わない利用のしやすさを前面にアピールする予定だ。

 「従来のような墓は持ちたくないが供養はしたい。そんな矛盾する気持ちの受け皿になれれば」。堂を管理する古田玄修さん(61)は期待を寄せる。

 古田さんたちは4年前、左京区の南禅寺塔頭・帰雲院で永代供養納骨堂の建設に携わった。費用は2人分で40〜100万円と手ごろなうえ、静かな環境が魅力的で、約180人の申し込みがある。半数以上は生前予約で、墓を建てても将来的に維持できるか不安を感じる人が契約しているという。

 永代供養墓にはさまざまな種類がある。帰雲院の納骨堂のように遺骨を一定期間安置したあと合祀する形のほか、最初から合祀する形もある。

 後者が、長岡京市の西山浄土宗総本山・光明寺が10年ほど前に立てた「永代合祀墓」。約千区画ある境内墓地の一角に納骨スペースを供えた供養塔があり、春や秋の彼岸には墓前で僧侶による法要が営まれる。

 参拝中の女性(67)は一昨年に夫を納骨した。「夫の死後に同居した娘の家族は転勤が多く、特定の場所にお墓をつくってもお参りできない。ここなら僧侶が定期的に回向してくれるので安心です」

 光明寺の出口歓貞執事は「今後は跡取りがいないなどの事情で墓を建てても、守っていくのが困難な人も増える。そのような時代に求められる供養の一つの形」と合祀墓の役割を説明する。

永代供養墓は新しい布教の手段 檀信徒離れの寺院も注目

納骨堂・永代供養墓運営セミナーには青森や長崎からも僧侶が参加し、アドバイスに聞き入った(2010年11月9日、下京区・キャンパスプラザ京都)

 少子高齢化で、墓に対する考え方が多様化し、継承者に縛られない永代供養墓のようなスタイルを希望する人が増えている。逆に、寺院側も檀信徒(だんしんと)離れと収入減といった現状の打開策として、檀家制度を前提とした従来の境内墓地とは別に、新しい「信者」を獲得しやすい永代供養墓に注目する。

 昨年11月、京都市下京区で開かれた「納骨堂・永代供養墓運営セミナー」。マーケティングの観点から永代供養墓の募集や宣伝のコツをアドバイスする狙いで、全国各地から僧侶50人が参加した。先に東京で開催したところ好評で、この日も当初の定員を大幅に上回った。

 講師の一人は東京で寺院コンサルタント会社を運営する男性。「永代供養墓は新しい布教の手段」とし、「選択の基準は安心感や親しみやすさ。サービス業に近く、本当の意味での布教力が問われる」と力を込めた。

 「募集の金額設定の目安は…」「宣伝費をある程度かけてほしい」「ニーズは掘り起こすもの」…。次々と繰り出す具体的なアドバイスに、僧侶たちは耳を傾けていた。

 主催した京仏具製造販売「小堀」(下京区)の小堀進専務(61)は手応えを感じている。「問題意識の高い僧侶たちが集まった。永代供養墓を機縁に、人々がお寺に足を運んでもらえるきっかけとなり、心に響くものが見つかるようになったらうれしい」。6月には名古屋でもセミナーを開く。

永代供養墓

家族が墓を守りきれなくなった場合も寺院などの管理者が定期的な回向を続けることをうたった埋葬形式。屋外や室内にロッカーや供養塔を設置したもの、墓石タイプのものなど多種多様な形がある。中には墓を運営する宗教法人が破綻した例もあり、供養の期間や管理の永続性など、細部の確認が欠かせない。
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【2011年3月11日掲載】