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(7)家族葬

親しい身内だけでゆっくり送る
葬儀会社のパンフレットや雑誌の特集記事では「家族葬」の文字が目立つ

 ここ数年、葬儀に関するチラシやホームページには「家族葬」の文字があふれている。「ご家族の想(おも)いを大切に」「10名様までの特別プラン」−。参列者を親族やごく親しい友人に限定し、価格も明示した、こぢんまりとした葬儀への関心が高まっている。

 大津市の会社員の男性(51)は2月上旬、88歳で亡くなった母親を「家族葬」で見送った。葬祭場に集まったのは子や孫ら8人だけ。喪主のあいさつなどは省略したが、ほかは一般葬とは変わらない流れで進んだ。

 「参列した家族が棺に順に花を入れて…。繰り返し自分の番が回ってくるたびにゆっくりと別れを告げることができました」

 10年ほど前に亡くした父親の葬儀では、自分の職場の同僚ら故人とは関係のない参列者も多く、慌ただしかった。面識もない会葬者に頭を下げ続けた母親の疲れた姿が印象に残っている。

 だから、今回は身内だけで見送る形を迷いなく選んだ。母親は病に苦しみつつ息を引き取ったが、男性は僧侶の読経に耳を傾けながら「楽になったんかな」と思いをはせる余裕を持てたという。

低価格志向もあって増加 イメージ一人歩きの面も

「家族葬」専用の葬祭場。小ぶりの建物で、参列者は30人まで。説明会には高齢女性が訪れていた(京都市東山区・洛王セレモニー東山会館)

 家族葬を多く手がける葬儀会社「洛王セレモニー」(京都市南区)では最近、葬儀依頼の8割が家族葬だという。この1〜2年に建てた葬祭場は、30人以内の会葬者を想定した小規模ばかり。

 「昔とは違い、人のつながりが薄くなり、金銭的にも最期は手厚くという感覚も弱くなってきた。時代の流れ、という気がします」。企画課主任の石井寛彦さんはいう。

 家族葬の増加は低価格志向と重なる面もある。景気低迷やデフレ経済に加え、高齢化や人付き合いの希薄化を背景に、葬儀になるべくお金をかけたくないと考える人が増えている。多くの葬儀会社は「葬儀の単価は下がっている」と明かす。

 西京区の家族葬専用葬祭場であった見学会に訪れた女性(63)は「死んだら、おいやめいにも知らせなくていい。葬儀には無駄なお金を使いたくない」と繰り返した。

 ただ、石井さんは「『家族葬』という言葉が一人歩きしているのでは」とも指摘する。冒頭の男性も、家族葬は会葬者が少ないため費用が低く抑えられるイメージを抱いていた。だが、実際には祭壇の料金など人数に関係ない費用も多く、「決して安くはなかった」と振り返る。

 いま葬儀を考えるとき、簡素化が選択基準の前面に出てきているようだ。だが、本来は故人を縁ある人たちがしのぶ場であるはず。そんなことを考えさせられるエピソードを聞いた。

 大津市の女性(53)は昨夏、夫に先立たれた。58歳の働き盛りだった。夫は自分の葬儀について闘病中から家族の苦労を気づかい、「家族葬」で済ますよう伝えていた。女性も同意、葬儀日程は一部の親族と仕事の関係者だけに知らせた。参列者は30人程度とみて、式場を用意した。

 ところが、平日にもかかわらず、約100人が参列。急きょ、式場の仕切りを取り払って隣室まで広げた。「うちは結局、『家族葬』にはならなかったんです」

 夫は口数は少ないが、面倒見はよく、業界団体の役員もしていた。高校時代は野球で活躍。訃報を知り、大勢が参列したのは当然ともいえた。

 女性は「主人が望んだ通りのお葬式にはならなかったけど、分かってくれると思います」と話した。

家族葬とは

 参列者を故人の家族や近い親族のみに限定したり、親友らを含む場合もあり、明確な定義があるわけではない。以前は「密葬」と呼ばれたスタイルに近い。故人の年齢にもよるが、葬儀日程を家族の勤務先や近所の住民らには知らせない傾向がある。参列者が少ないからといって費用もその分安くなるとは限らず、見積もりを出してもらい、内容を事前に確認することが必要だ。
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【2011年3月25日掲載】