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(10)生前準備

遺影や衣装、自分らしく
カメラマンの多田さんが撮影した川村さんの「生前遺影」。「リアルなその人を撮りたい」と心がけている

 仕事着姿で帽子の下は穏やかな表情。撮影場所は、散歩コースの川べりをカメラマンが選んだ。大阪府八尾市の木工職人川村亥佐治さん(76)の「生前遺影」だ。

 「バチッと背広で決めるはずが、のせられてしまった」と苦笑いする川村さん。元気なうちから「遺影」を用意することに抵抗感がないわけではない。でも、同世代で亡くなる人が増えてきて、遺影に適した写真がないと耳にすることがあった。準備を思い立ち、知り合いを通じてカメラマンを頼んだ。

 笑顔の遺影に、家族や工場の従業員たちはみんな「これでいこう」と気に入ってくれた。本人もまんざらでもない。「身内だけの家族葬でするなら、笑っている遺影もいいのかな」

 川村さんを撮影したのは、京都市東山区に「凛写真工房」を開く多田雅輝さん(33)。昨秋から遺影用の写真に力を入れている。

 遺影の多くは、集合写真を引き伸ばしたり、ピントが甘かったりで、「ベストショット」は、まれだ。多田さんも6年前に父親が亡くなったとき、「カメラマンなのに、いい写真を残せなかった」と後悔の念があった。

 依頼を受けると、その人らしさが表現できる日常の場面での撮影を提案する。畑仕事だったり、ギターを手にしたり。亡き父親でも思い出されるのは、釣りをしているときのにこやかな表情だ。

 撮影は妻のいづみさん(25)がスタイリストとして手伝う。多田さんは「遺影は『人生の証明写真』。リラックスした一番いい表情の遺影を見たら、見送る人たちも思い出話が弾むはず」と願いを込める。

日常の姿、思い出話に 生き方考える契機にも

「終活ファッションショー」には、それぞれが人生を象徴する姿で登場した。チアリーダー姿で出演した30代の女性は「踊ることが人生を支えてきた」と語った(2010年7月・大阪市内)

 自分が息絶えて棺に入る時、何を着ていたいか−。そんなテーマでファッションショーを企画した女性がいる。木津川市の司法書士安田祥子さん(45)。「どんな衣装で最期を迎えたいかを考えることは、自分の死にざま、ひいては生き方を考えるきっかけになるのでは」

 昨年7月、大阪で開いた「終活ファッションショー」には、呼びかけに応じた20〜70代の13人が、個性あふれるいでたちで出演。ステージには好きな音楽や自身の講演テープが流れ、人生の節目を写した数々の写真が映し出された。

 60代の女性は鮮やかな黄色のサリー姿で「ただ一枚のこの布のようにシンプルに人生を終えたい」と語った。普段着姿で家族と登壇した40代の女性は「幸せな家庭を築けたのは両親のおかげ」と笑顔を浮かべた。

 大阪市でオーダーメードのスーツ店を営む高木洋平さん(29)は、自分でデザインした明るいグレーのスーツ姿で登場。普段は口にする機会のない両親への感謝を込めたメッセージを披露した。最年少での参加だったが、「自分の死を真剣に考えたことで、今できることをきっちりやらなければと思うようになった」と語る。

 安田さんは職業柄、相続をめぐるトラブルに多数出合ってきた。「故人が意思を書き残しておけば回避できた事例も少なくなかった」と実感する。とはいえ、死を見据えた言動はいまだにタブー視されることが多い。

 「ファッションという分かりやすい切り口から自分のエンディングを考えてみてもいいのでは」

終活

 人生の終末をより納得して迎えるために、元気なうちから進める一連の準備活動を「終活(シューカツ)」と呼ぶことがある。遺影や衣装のほか、エンディングノートや葬儀の生前契約も最近の傾向。遺影を撮影してくれる写真館は、日本写真館協会のホームページからも探せる。
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【2011年4月15日掲載】