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(1)彫刻家 名和晃平

PixCell−Elk #2 表面と細胞のリアリティー
「アジア・パシフィック・トリエンナーレ」(オーストラリア)で展示されている「PixCell−Elk #2」(2009年、ミクストメディア)Work created with the support of Fondation ☆entreprise Herm★s 注)☆entrepriseの☆は、「d」の右上に「′」、Herm★sの★は、「e」の上に「´」

 クリスタルガラス球で覆われた体長約2・5メートルのシカのはく製は、頭や胴体、角などの部分が見る角度によって多様に映し出されるが、全体を直接見ることはできない。ガラス球といpう皮膜をまとった瞬間、見知っていたつもりの物は、まるで異なるたたずまいで目の前に立ち現れる。

 「はく製は、表面は本物の動物のようだが中身はない。われわれの感じるリアリティーとは、表面についての視覚にすぎないのでは」。名和晃平(1975年〜)は、立体のボリューム感を見せる芸術である彫刻を再解釈、「表面の画像」と、「細胞」の集合からなる現代感覚あふれる彫刻で注目を集めている。

 「PixCell(ピクセル)」と名付けた作品群は、ガラス球を張り付けた「ビーズ」のほか、液体に浮かぶ泡、不透明な発泡ウレタンの作品もある。昨秋、東京のメゾンエルメスでの個展では「Elk #2」などこれまでの成果を見せつけ反響を呼んだ。現在、同作品はオーストラリアに出品中だが、海外展への招待や受賞歴も多数。デビュー10年で飛躍を遂げた。

 2005年から翌年にかけ、ニューヨーク、ベルリンに滞在。その経験をもとに進めているのは、京都市伏見区での新拠点づくりだ。昨年春から、宇治川沿いの延べ約500平方メートルの広大な元工場を「SANDWICH」と名付け、改装中だ。アトリエとしてだけではなく、海外アーティストの滞在受け入れや、准教授を務める京都造形芸術大の講義も行う。グラフィックや建築のチームも入居予定で「いろんな人が出入りすることで、クリエーティブなことが自然発生的に起きることを期待している」。

 90年代に注目を集めた村上隆、奈良美智に続く世代として「日本発のアートシーンをつくりたい」と目標を持つ。「日本のアートはレベルが高いのに、発信できていない。従来のように欧米での評価を逆輸入するのではなく、ホームを変えていくべき。そのためには発信力が必要です」

 現在も国内外で10以上のプロジェクトが同時進行中という多忙ぶり。京都を拠点に「インターナショナルなつながりを持って活動したい」と、今後の10年をしっかりと見据えている。

 京都の若い世代で新たなアートが胎動する。1970年代以降生まれの作家を月2回(毎月第1週と第3週)紹介する。

彫刻家 名和晃平

 「日本からアートを発信したい」と話す名和晃平さん(京都市伏見区)

【2010年4月3日掲載】