京都新聞TOP > 文化・文芸・教育アーカイブ >京の新鋭
インデックス

(2)現代美術家 三宅砂織

ベッド 感覚を光で一挙に型取り
VOCA賞を受賞した2点のうちのひとつ「ベッド」(2009年、ゼラチンシルバープリント)

 白い絵が、まるで夜空の星座のように画面から浮かび上がっている。三宅砂織(1975年〜)はこのほど、フォトグラムの技法を用いた「ベッド」と「内緒話」で、平面作家の登竜門VOCA賞を受賞した。

 「絵画作品ではないので、受賞するとは本当に驚いた。評価されることの重要さをリアルに知った」と喜びを語った。

 フォトグラムは、印画紙を感光させて画像を定着させる。透明なシートに描いた絵をネガフィルムのようにして現像する技法に、数年前から取り組んできた。

 京都市立芸術大で当初、油画を描いていたが「絵をどこまで描いたら完成なのかがわからなくなった」。そこで「描く」という行為と距離を置いてみようと、版画を専攻した。

 フォトグラムが完成するのは暗室の中。シート数枚を重ね、印画紙を置いて感光させると、黒く描いた部分は白く、描いていない部分は黒く反転する。シートの間に刺繍(ししゅう)用のビーズやスパンコールなどの小物をちりばめるなどして、さまざまな画像が印画紙の中で一体化。光源とシートとの距離を変えることで焦点が合ったり合わなかったりという効果も生かされる。

 「基本は絵を描くことですが、現像液に浸けて像が浮かび上がるまで、どんな絵になっているのかは正確に分からない。かなり遠くを見越して描く行為をしていると思う」。光によってできあがる画像は、版画ではつぶれてしまうような繊細な筆致や粒子などの細かなニュアンスを拾い出す。

 ベッドの上で飛び跳ねたり、足を伸ばしてみたりと屈託のない少女たち。シーツのしわ。星状の形やガスのようなもの。これらは、筆で直接キャンバスに描かれたのとは異なり、あいまいな感覚を漂わせたまま画面に定着されている。まるで、不定形で柔らかな生物が生き姿のまま化石となったのを見るように、光と影に置き換わった絵は、逆に生々しさが際だってくるところが面白い。「人物を直接石こうで型取りしたジョージ・シーガルの彫刻のように、感覚的なものを光で一挙に型取りするイメージです」

 絵画に根ざしながら、絵画以上に感覚的な表現。「絵の線は、引いたとたん意味を規定してしまう。無理を承知で、雲のような不定形のものをそのまま描けないかと見いだした技法です」。絵のモチーフの少女たちは、大人になる手前のまだ輪郭が不確定な存在の象徴なのだ。

現代美術家 三宅砂織

 「流動的なものを描きたい」と話す三宅砂織(東京のギャラリー「ラムフロム」)

【2010年4月17日掲載】