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(3)やきもの作家 上田順平

ウラシマピーターパン 吉祥や民話、無限に連鎖
岡本太郎記念館で発表、「アウェー」での展示を意識し制作したという「ウラシマピーターパン」(2009年、陶磁器)撮影‥福永一夫

 カメに乗って竜宮城へ赴く浦島太郎の、長い頭は七福神の福禄寿のよう。カメには玄武を思わせるヘビ。鶴のマークの飛行機の羽がのび、機首にはウサギの耳…。まるで吉祥の無限連鎖のような陶芸作品「ウラシマピーターパン」には、パワーと造形美があふれる。

 上田順平(1978年〜)は2006年、京都府美術工芸新鋭選抜展の最優秀賞、08年には岡本太郎現代芸術賞で次点の敏子賞を受賞。日本の民話や現代の大衆文化のモチーフを引用した作品で注目されている。

 陶芸との出会いは「修学旅行の九州で買った土産物」。シールを焼き付けた安物の陶器がなぜか「日本的だ」と思えた。ただ「陶芸には縁があったのかも」と語る。千利休が出た堺の出身。日本のやきもののルーツでもある古墳文化も濃厚だ。加えて、だんじりや大阪・道頓堀など過剰なまでのエネルギーに満ちた街の文化もバックグラウンドにある。ポットの注ぎ口や取っ手の形に美を感じ「取っ手フェチ」を自称するが、「型が決まった中での自由な作り込みに創作心をかきたてられる」。そこには、大阪のコテコテな文化に通じるものがあるかもしれない。

 口伝えに広がるうちに多様化する民話のように、上田は言葉や形の連想からイメージを取り込む。金太郎からクマを連想し、クマがケンタウルスに。金太郎のおかっぱ頭はお椀に、そこからヘルメット学生に。興福寺の迦楼羅(かるら)像も呼び寄せられ、摩訶(まか)不思議な「キンタウルス」が誕生した。「雑多さ加減が自分であり、もしかしたら日本かもしれない」。器とは空虚だ。だからこそ、過剰なイメージを盛り込むことができる。それは「器」としての陶芸を地で行くものだ。

 ただ、ここにきて「こう作ればこうなる、という計算が見えるようになってきた」といい、新たな方向性も目指している。1日までイムラアートギャラリー(京都市左京区丸太町通川端東入ル)で展示中の新作「カンゲン」は、うつろな目をしたはにわのような造形。これまでの縄文土偶のような主張の強さから一転、「見る人が入り込んでもらえるような、違う生命観に挑んだ」。

 玄武やインドの宇宙観も融合させた「ウラシマピーターパン」では、「日本の民話のイメージは、意外と世界につながると発見した」。8月から1年間、メキシコに滞在し、装飾性の強いメキシコの建築などの文化に触れる予定。「意外と日本に通じるものがあるかも」と、想像力の共振は、広がりそうだ。

やきもの作家 上田順平

新作「カンゲン」は「違う生命観に挑んだ」と話す上田順平(京都市左京区・イムラアートギャラリ)

【2010年5月1日掲載】