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(6)映像作家 林勇気

the outline of everything デジタル画像の手触り感
物の輪郭線が画像にかわっていく映像が展開する「the outline of everything」(2010年)

 白いテーブルに、人物が両手につまんで差し出したひもが形を取り始め、生い茂る木となったり、道路標識となったり。実写とアニメーションが継ぎ目なく接続された映像は、テーブルの上を舞台に、ものが生まれては消えていく。まるでそこに現れるすべてに触れることができるような不思議な感覚だ。

 林勇気(1976年〜)の映像作品「the outline of everything(ジ・アウトライン・オブ・エブリシング)は、「物の手触り」に焦点を当てた。

 国内をはじめ欧米やアジアの計8カ国の映画祭で作品が紹介される若手の注目株。これまでの作品では、まるで初期のテレビゲームのような画面の中を、人物が歩いたり空を一直線に飛んで雲に乗ったりという場面が循環し、クールさを感じさせてきた。

 現在、講師を務める宝塚大の出身だが、学生時代は映像デザイン学科で特撮技術を学んでいた。チェコの作家ヤン・シュバンクマイエルに衝撃を受け、アニメーションを始めたという。ただ、制作器材は現代風にパソコンとデジカメだ。

 「膨大な映像や画像が集積してできる景色に、意味を感じている」。手当たり次第に撮ったり、インターネットを通じて集めた膨大な画像ストックの中から、作品の素材が選ばれるが、そこには作者と画像の独特の距離感がある。「画像を見ると『これを使って』というのが見えるんです」。林の作品には、日常のありふれたものたちを切り取り、人物の動作もコマ撮りでつくるなどの「手作り感」が隠し味となっている。

 画面上でドローイングが行われていくように、ものの輪郭が生み出されていく「the outline−」。そこにも、画像を背景から切り離す際の「手作業」が活かされている。「デジタル画像は実体がないが、マウスを使い画像を切り取る作業を通じて、画像に触れ、なでるような感じを覚える。その感覚は手放したくない」。次々と現れては消えるモノたちは何の脈絡もないように見えて、道すがら撮ったものが時間軸に沿って選択されている。リアルな場所と時間の記憶も潜んでいるのだ。

 「これまで表現の幅をセーブしてきた部分があったが、提示の仕方も含め広げていきたい」。最近ではライブで映像を作り見せるなど幅も広がる。8月に京都市内で開かれる「わくわくKYOTOフェスティバル」にも出品予定で、どんな見せ方をしようかと構想を膨らませる。

映像作家 林勇気

「画像に触れる感覚を大事にしたい」と語る林勇気(京都市中京区)

【2010年6月19日掲載】