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(8)染色作家 Min Min

歳月 故郷の記憶しっとりと
枯れゆくハスのと記憶を重ね、「2010京展」で京展賞と買い上げ賞を受賞した「歳月」(2009年)

 75年の歴史を持つ新進作家の登竜門「京展」(京都市美術館主催)の工芸部門で3年連続入賞、今年は2年ぶり2度目の部門最高賞「京展賞」と作品買い上げという快走ぶりを見せるのは、MinMinという謎めいた名を持つ作家。本名は王向民、中国出身で京都精華大の博士課程に在籍する「作家の卵」だ。

 母国の大学で服飾デザインを学んだのち来日し10年。染色には同大で出合った。学科名「テキスタイルデザイン」を直訳して服地(テキスタイル)の図案を学ぶところと勘違いし志望、入学したことがきっかけという。2年生までは基礎技術だったが「3年生で作品づくりの授業となり、『これは違うのでは』と気づき、どうしようか迷った」と笑う。

 だが、次第に美術としての染色に面白さを覚え、大学院へと進んだ。過去の染色作品だけでなく日本画や洋画を学び、06年の京展初出品作が入選した。が「技術だけで個性がない、と大学の先生からの指摘された」と、評価は厳しかった。

 「日本人には表現のできないものを出せば」と、アドバイスも受け、08年「残」では、深緑色を基調色に、子供のころに遊んだ寺の門をモチーフに染め、京展賞に。「自分の感情を出したら、良い作品ができると気づいた」。この時から幼少時の愛称であった「Min Min(ミンミン)」の名で作品発表を始めた。

 翌年の京展市長賞受賞作「朝明け」も、幼少時に過ごした河南省の祖父母の家から近い黄河の朝焼けを描いた。朝早くから背負子(しょいこ)に負われて田に出ては、広い空が明けていく光景を何度も見た。深緑色の水の広がりは、黄河を表しているという。日本人には海に見えるかもしれない。なぜ、黄河が深緑色なのか。

 「緑色は、命を表現し、当時の人々がみんな着ていた服の色で、記憶と深く結びついている。私にとって黄河は緑色なのです」。

 その後、上野の不忍池のハスを見て、高校生の時に学んだ宋代の儒者周敦頤(しゅうとんい)の名文「愛蓮説」を思い出し、ハスをモチーフに描き始める。ハスは泥より出て染まらず、との名高い一説。今年の出展作「歳月」では、緑色の地の下に祖父母の家が写し出され、枯れたハスがしっとりとした味わいで時の経過を表現する。

 来春でいよいよ学業も終わるが、日本で活動を続けるつもりだ。「作家としてはまだ幼児。これだけ染色の作家が活動しているのは日本だけ。作家ともっと交流したい」と意欲を見せる。

染色作家 Min Min

「日本の染色作家と交流を広げたい」と話すMin Min(京都精華大)

【2010年7月17日掲載】