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(9)美術作家 花岡伸宏

見る者の思考回路を停止
「アートキャンプ2010」に出品されている「円柱の飯は木彫りの台の部分を貫通する」(2010年、サントリー美術館「天保山」)

 円柱の飯は木彫りの台の部分を貫通する

 きりっとした木彫像の台座を、円筒形のご飯のかたまりが貫通している。これは一体…。花岡伸宏(1980年〜)は、一刀両断された仏像や人物像がばねに引っ張られたり、ずり落ちた部分がご飯に突き刺さったりと、見る者の思考回路を停止させる作品で、群馬青年ビエンナーレ奨励賞や岡本太郎現代芸術賞展特別賞を受賞してきた。

 「笑いを狙っているわけではない」。30歳となった花岡は強調する。彫刻のかたわらに、いきなり存在しているご飯は「互いに無関係なものを同居させるコラージュ」。それによって彫刻のもつドラマ性を無化し、物体そのものを前面に出したいのだという。

 関西の作家はしばしば、笑いの感覚にたけているといわれる。情報に惑わされずマイペースで制作ができる環境も、のびのび度をはぐくんでいる。自身「どんな発想でも自由だった」と出身の京都精華大の環境を振り返る。花岡作品もそうした滋養をたっぷり吸収した味わいを感じさせるのだが、どんなところを突いているのだろうか。

 現在、作品はもっぱら木彫だ。4年前、大学を出てから加えてもらった共同アトリエは、北山杉の産地も近い場所。共同使用する先輩が木材を使っているのを見て、自身も一昨年、岡本太郎賞応募作の「ずれ落ちた背中は飯に突き刺さる」で初めて挑戦した。

 「それまでは素材感を出さないために、無機質な樹脂を使っていたが、むしろ、ぬくもりや素材感があるほうが、作品にギャップを生む効果が大きい」と、木材を使う理由を話す。とはいえ、「体を使って作業しているという感じになる」と、労働にも似た木彫の作業に愛着を覚える。一作ごとに、のみも手になじむ。作業中に聴く音楽は無機質なテクノミュージックだったのが、さだまさしの曲が混じるようになってきた。

 台座を唐突に貫通するご飯にもっていかれた木彫の緊迫感や造形美。おかしいが、何だか怖くもある物体。「ある物や状況を別の視点からみると、まったく違った風に見える。その瞬間に感じる衝撃を表現したい」。笑いも恐怖も含んだ不条理。最近では、絵の中にピンセットが浮遊する映像も発表したが「いろんな表現方法を通じて『ああいった感じのものを作っている人』と思われるようになりたい」と抱負を語る。

 作品はサントリーミュージアム「天保山」(大阪市港区)で12日まで展示されている。

美術作家 花岡伸宏

制作中のシリアスな木彫を前に、創作を語る花岡伸宏(京都市右京区のアトリエ)

【2010年8月7日掲載】