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(11)画家 大舩真言

原初的な五感に訴える
昨年、パリの築200年の元繊維工場のアートスペースで発表した作品「WAVE−infinite−」(2009年)

 湖東の集落にある2階建て民家のアトリエは、京都では望むべくもない広さ、静けさ。「絵に対する集中力が違う」。大舩真言(おおふねまこと)(1977年〜)は、18日から地元で始まるBIWAKOビエンナーレへの出品に向けて準備に余念がない。

 07年の前回展では、薄暗い酒造蔵の中に舞台のような空間をつくり、大画面の作品を展示、時刻による光の変化や目の慣れによって見え方が変わる絵画が強い印象を残した。

 近江八幡で育ち、京都教育大で日本画を学んだが、具象的な形を描かず、絵筆のストロークを丹念に重ねた明暗で構成される大作を発表してきた。海の底のような、あるいは湖面と空のような深い闇に緩やかな光が差すような絵画の前にたたずむと、画面の奥行き、空気感、音のざわめきまでも感じられるようだ。

 学生時代に現代音楽のバンドで活動した経験から、音のうねりの感覚を絵にするような抽象的作品を手がけてきた。現在の創作のきっかけとなっているのは6年前、パリを旅したことだったという。ギャラリストと知遇を得、アートフェアに出品したが、ヨーロッパや南米の自己主張の強い作品が並ぶ中で「自分の絵は薄くてかすかな気配。やはり日本人の描いた絵だ」と悟ったという。以来、麻紙に岩絵の具を用いるが、原料の鉱物を砕いて手作りし、粒を荒くして画面の質感を工夫するなど研究熱心だ。

 ただ、普通の日本画のように下図を描き、それを本画に写すという描き方はとらない。「絵のダイレクトさが失われてしまう」と感じるからだ。「湖でも滝でも、ずっと接近すれば抽象に近づいてくる。自然との距離をどうとるかの問題」。大舩の絵は広い意味で風景画と言えるかもしれないが、直接、五感を通じ感じ取られた自然。フランスの地方を車で旅した時の空漠とした大地と空の印象。現在居住する湖東の風土にも「近しいものを感じる」。

 昨年はパリの築200年の建物を利用したアートスペースで発表。スイスから訪れた来場者から「私の地元の湖を描いたのでは」などと感想も。「国や民族による習慣の違いを超えた、原初的な共通する感覚に訴えかける絵を描きたい」

 「BIWAKOビエンナーレ」では近江八幡の旧市街での新作展示のほか、湖岸に作品を立て、水郷めぐりの船から鑑賞するユニークなプロジェクトも。「同じ光の状態というものはなく、作品との出合いは一期一会。見るたびに印象の違う絵を」と意気上がる。

画家 大舩真言

「湖国の環境が創作に適している」と話す大舩真言(近江八幡市)

【2010年9月11日掲載】