京都新聞TOP > 文化・文芸・教育アーカイブ >京の新鋭
インデックス

(13)建築家+庭師 中西中井

海と空と石垣の街 周囲と調和、異世界を演出
「瀬戸内国際芸術祭」に出品されている、石垣のある路地を峡谷に見立てミニチュアの家を配置した「海と空と石垣の街」(高松市男木島)

 今年は、東京国立近代美術館での「建築はどこにあるの」展、豊田市美術館の石上純也展など注目すべき建築展や若手建築家の個展が美術館で相次いで開かれ、31日まで開催の瀬戸内国際芸術祭でも、建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を受賞した妹島和世が集落に家を再生させる「家プロジェクト」などが目を引き、建築は今や美術として注目されている。そんな中、同芸術祭に京都から出品しているのも、建築系ユニット「中西中井」だ。

 港から斜面に立ち並ぶ集落に入る道沿いの石垣に、24個のミニチュア住宅が架空の村をかたちづくっている。空と海に囲まれた空間の中で、石垣にへばりつく小さな家並みは、ふっと異世界を感じさせる。

 中西中井は、京都大高松伸研究室出身の中西ひろむ(1980年〜)と、同大学農学部出身で庭師の中井岳夫(1980年〜)の2人組。大学時代に、陶芸部で出会って以来の友人同士。中西は母方の故郷が香川県、中井は高松市出身で、香川で芸術祭が行われると知り、公募にプランを出したところ選ばれた。

 「建築を通じ、海や空、その土地が見える作品に」と中西はコンセプトを話す。8分の1スケールの家を並べて、石垣の存在を際だたせた。白やブルーの色は空や海を思わせ、内部のカーテンが風を受け揺れる。

 制作にあたり、夏と冬に現場を視察、地形や気候をふまえたうえプランを立てた。現場の風雨に耐えうる作品をどう建てるかという建築家ならではのアプローチ。宮崎駿のアニメに出てきそうなファンタジックな外見だが、しっかりと左官仕上げがなされている。現地での設置作業は中井が主導。「ネジや錐(きり)の選び方まで、学んだことは多い」と設計を担当した中西。

 そして近年の建築の傾向として、建築をモノとして単体で押し出さず、周囲の環境と調和させる方向性。「美術作品としてなら、もっと色を目立たせるなどするかもしれないが、奇をてらわずに」と中井。美術も建築の傾向と同調するように、微妙な環境に耳を澄ます風の作品も増えているが「島の景観に負けない作品を作ろうと思ったら、圧倒的にスケールがないと」と造園からの視点は新鮮だ。

 「見てくれる人の数が、建築業界で紹介された時と比べて格段に多いのはうれしい」と中西は手応えを語る。建築のアプローチは、野外や街中で繰り広げられるアートプロジェクトにとって、ますます必要になるに違いない。

建築家+庭師 中西中井

中西中井を結成する中西ひろむ(左)と中井岳夫(京都市左京区)

【2010年10月2日掲載】