京都新聞TOP > 文化・文芸・教育アーカイブ >京の新鋭
インデックス

(15)美術家 ヤマガミユキヒロ

都市風景画に “血液”流す映像
都市風景の油彩画に映像が現れる「Sleep Walking」(撮影・草木貴照)

 ネオンが明滅する街路に浮かんでは消える、車や歩行者たち。朝から夜へと移りゆく映像が、たて1・6メートル、横3・6メートルの油彩画に投影され、終わりなきドラマを繰り広げるよう。ヤマガミユキヒロ(1976年〜)が表現するのは都市。7月にオープンしたギャラリー「PARC」(京都市中京区三条通御幸町)で、若手作家を紹介する企画の第1弾として26日まで開かれている個展。ヤマガミは東京で今春発表した作品を磨き上げた。ギャラリー外側のビル2階窓からは、ネオン光を長時間露光で撮影した作品が街路の空間に向けて投影され、作品そのものが街のにぎわいの一部と化す。

 「街の風景には、自然風景よりも記憶にひっかかるリアルさを感じる」とヤマガミは話す。大阪・高槻市の出身で、大阪にも京都にも慣れ親しんだ。京都精華大洋画コースの出身で、都市風景を好んで描いていた。「一瞬の姿でなく、刻々と表情が変わる様子が表現したかった。絵に血液を流そうと」と、「キャンバスプロジェクション」と呼ぶ映像を重ねる手法を編み出した。2008年には、この手法で描いた大阪・梅田の夜景パノラマ大作「Night Watch」で岡本太郎現代芸術賞展特別賞を受賞。映像だけの作品、音と文字を組み合わせた作品など、街を舞台に多彩なメディアで制作する。

 今作では、映像をただ重ねるだけでなく、空、車、人など複数のパートに分割。空は早回しで短時間で昼と夜が入れ替わるが、車と人はスローモーション。時間感覚のギャップが不思議な余韻を生む。14分間で一巡する映像を撮るため、東京・銀座まで1年間かけて通い、同一の地点からカメラを回し続けた。

 「表現したいのは全体の流れで、看板の一つ一つを再現することに核心があるわけではないが、それをすることで説得力が出る」。具体的な細部を再現することで「多くの人が共有するイメージを喚起できるから」。

 作品を見ていると、ふっと映像が消え、無人の舞台のように静まりかえる瞬間がある。にぎやかな時間が幻のように過ぎ去る。作品は具体的な街を描きながらも、イメージの中の街を描き出している。

 変わらぬアングルからこの光景を眺めているのは、一本の街路樹なのかもしれない。「まるで丘の上から眺めているよう、と言われるんですが、今度はある個人の視点から街を眺めるとどう見えるかを作品にしてみたい」と着想を語る。街に対する興味は尽きない。

美術家 ヤマガミユキヒロ

「街には面白い素材が多い」と話すヤマガミユキヒロ(中京区)

【2010年12月11日掲載】