京都新聞TOP > 文化・文芸・教育アーカイブ >京の新鋭
インデックス

(16)絵描き 三瀬夏之介

奇景 「東北画」の可能性を追って
2003年から描き続けている「奇景」をバックに制作について語る三瀬夏之介(2日、京都市中京区・市立芸術大ギャラリー@KCUA)

 もはや「新鋭」と呼ぶにはふさわしくないかもしれない。三瀬夏之介(1973年〜)はこの数年、数々の受賞や国内外展への出展など進境著しい。わき出る雲や、星を連想させるきらめきが幾重にも広がる中に、五重塔や時にはUFOも登場するユニークな風景の大作が、京都市立芸術大ギャラリー@KCUA(京都市中京区御池通油小路)で26日まで展示中だ。

 2003年に描き始め、ライフワークとして継続中の連作「奇景」。これまでに制作した46枚を初めて、幅25メートルの壁面に2列で展開している。

 描かれているのは、古いものと新しいものが混在した現在の日本。伝統的な絵巻とは逆に、進行方向は左から右だ。「(テレビゲームの)スーパーマリオの影響。画面が右へと進む感覚になじみがあります」と笑う。むしろ、伝統的な花鳥風月に実感がわかず、京都市立芸術大で日本画を専攻して以来「『日本画』とは何かと、すっと悩まされ続けた」。05年、山本太郎ら若手画家で開き、話題となった「日本画ジャック」に参加したのも、日本画に対する違和感の表明だったかもしれない。

 が、06年の五島記念文化賞美術新人賞など、三瀬の絵は日本画としても評価されてきた。ジャンルを飲み込むように広がる制作。現在の制作を示すのが、もう一方の壁面に立てられた大作「だから僕はこの一瞬を永遠のものにしてみせる」。こちらは、東北芸術工科大の准教授として09年から赴任した山形を舞台に、月山や青く抜けた空などを取り入れた。生まれ育った奈良、学生時代を送った京都とは異なる、雄大な自然、縄文につらなる文化の古層。「『いくつもの日本』がある」と実感した」

 07年、同新人賞の副賞としてイタリア・フィレンツェに滞在した際に、かけられた一言が忘れられない。同世代の詩人に絵を見てもらった時、背景を知ってもらおうと「日本画とは…」と説明を始めたところ、「日本画の事情は関係ない。『アート』があるだけだ。君の絵は僕には分かる」と言われた。「『日本画』を前提にしなくても通じる、と確信が持てた」。

 グローバリゼーションが進んだ世界。三瀬の絵はひとつの構図にまとまらず、通り過ぎた風景が墨に乗って増殖し、終わりなきロードムービーのよう。現在の関心は、地域から立ち上がる必然性だ。「日本に『日本画』があるなら、東北には『東北画』があってもいいのではないか」。最終日の26日、トークイベントで「東北画は可能か?/日本画は可能か?」と題し、参加者と考える。

【2011年2月12日掲載】