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(17)画家 中山玲佳

或る惑星 メキシコ体験が内なる世界開く
「VOCA展2011」でグランプリを受賞した「或る惑星」(2010年)

 真っ二つに割れたオオカミの顔、カラフルな縞模様や暗い色の光景…まるで現実と幻覚のはざまをさまよっているような。中山玲佳(1974年〜)の「或る惑星」は、「VOCA展2011」(14〜30日、東京・上野の森美術館で開催)でグランプリに輝いた。若手平面作家の登竜門とされる同展で、関西勢の受賞が5年も続く。

 「えっ、あんな絵でいいんですか」と、知らせに驚いたという。家事を切り盛りしながら、2歳になる長男を保育園に送り出した時間で描いた作品。2007年、それまで6年間を過ごしたメキシコから帰国後、絵画に再び向き合った。

 京都市立芸術大大学院を修了後、「長い旅行のつもりで」渡った。絵画から離れ、立体や版画を制作したが、何より影響を受けたのは陽気で、マイペースな生活文化だったという。「国というか人が好きで、帰るのが惜しかった」と笑う。

 一方で、大航海時代以来の征服の歴史が、どこか奥底で影を落としているようでもあった。それが何なのかは、はた目にはうかがい知れない。「以前から、外側に見える世界と、内側にあるものの関係が気になっていた。人と人がいくらしゃべり合っても、本当に思っていることは言葉に表せなかったり」。それが制作テーマでもあった。暗さを秘めた明るさの文化に触れ、「気になっていたことが、解決するような気がした」

 どこまで近づいても見えない他者の中身。中山は現在描いている絵を「箱」に例える。「中が見えなくても、見る人によっては何かが入っているように感じるかもしれない」。描くものは動物など具体的だが、描かれているのは裏側にある感覚的な世界だ。

 帰国後、2枚のキャンバスにシカと環状の模様を描いて並べ、メキシコの友人に見せたところ「シャーマンの世界を描いたのでは」と言われた。先住民の文化では麻酔作用のある植物を用い、動物に導かれ神と交信するのだという。「もちろんそんなつもりで描いたのではなかったのですが」としながらも、内側と外側というテーマと奇妙に符合する指摘に、強い印象を持った。

 縞模様の中に描かれた動物、暗い光景に浮かび上がる白い楕円…画面には随所に「穴」が配され、作品の表層と深層をふっと反転させる。「今にしてみれば、あの年月自体が、人生に開いた『穴』のようです」。異文化体験が内なる世界へとつながり、壮大な光景となって現れた。

画家 中山玲佳

「メキシコでたまっていたものが出てきたかも」と話す中山玲佳

【2011年3月12日掲載】