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(18)美術作家 寄神 くり

owl hole フクロウが見たパラダイス
じゅうたんの作品「owl hole」(中央)をはじめとした作品で構成された展示空間(京都市中京区・京都市立芸術大ギャラリー@KCUA)

 ギャラリーを仕切った部屋に、じゅうたんや植木鉢などの暮らしになじみのある物たちが並ぶ。

 が、じゅうたんの図柄は街灯に集まる虫や動物だったり、鉢の内側には雑多な生き物が描かれたりと、どこか不穏な印象。寄神くり(1975年〜)は、インテリアやファッションの素材を用いながら、人とモノとのかかわりを浮かび上がらせる作家。京都市立芸術大ギャラリー@KCUA(京都市中京区)で9日に始まる「転置」展で、同芸大出身の寺田就子、野原健司、森末由美子、吉村熊象とともに展示中だ(5月22日まで、月休)。

 両親は現代陶芸家の寄神宗美・千恵子夫妻。京都市立芸術大では彫刻を専攻、その後オランダで応用美術科に進む。デザインや工芸などジャンルが異なる学生同士で共通の話題となっていたのが「作品が持ちやすいか」「どう身に着けるか」など「身体とモノとの関係」だった。「制作の上で大事なことだと気づかされた」と振り返る。

 人はじゅうたんを見て何を思うだろうか。「じゅうたんは、敷いた場所が居場所になる」と、それがつくりだす機能に注目する。遊牧民が生み出したじゅうたんには昔から、パラダイスが図案として描かれてきたというのだが、その図柄は、飼い慣らされた猛獣など「自然の統御」の象徴なのだった。

 寄神はその歴史にちなみ、現代のパラダイスを描く。今回、展示された「owl

 hole(オウル・ホール)」と題した作品はフクロウが見た夜の光景。社会秩序の外にあるまがまがしいカオス的な世界を、四角いかたちの中に閉じ込め制御する営為。そこには文明の秘密が隠されているのかもしれない。じゅうたんを見つめることで、そんな奥に秘められたものまでが見えてきそうだ。

 一方、展示作品には家具のような装飾のついたて、バルコニー、巨大な宝石箱のようなオブジェもある。「ついたてを見ると、向こうへは行ってはいけないと思わされる。日常の中から機能的、精神的に必然性のある物を注意深く観察することで、創作につなげています」

 07年からフランスに在住。整然とした街並みが秩序感にあふれるが「建物に囲まれた中庭では、人目をはばかることのない気ままな世界が広がっているのに驚きました」。日本とは異なる秩序と自然のバランスの取り方を目の当たりにし、新たな創作意欲がわいてきたと近況を語る。

美術作家 寄神 くり

「日常のモノへの思いが出発点」と話す寄神くり

【2011年4月9日掲載】