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(19)陶芸家 原菜央

うさわん 残酷な寓意とカワイさ
「怖カワイイ」世界観を醸し出す「うさわんシリーズ」

 ブタのような、どこか愛嬌のある化け物の顔が茶碗の正面にあしらわれ、ウサギは器から飛び出して逃げるようだ。恐ろしげなパンダをかたどる器は、中国雑技団風のウサギを追いかける。型抜きしたウサギを絡め、細部は彫刻する。この茶器「うさわん」を茶会に堂々と持参した。が、ゴテゴテして手の上で回せない。どこから口を付けていいのか、アナーキー。青とピンクが白い磁器に映え、ファンタジックだが、残酷な寓意とカワイさが変な後味とひっかかりを残す。

 14日に小山登美夫ギャラリー京都(京都市下京区)で始まる「ワンダーランド 陶アート展」(6月4日まで。日月祝休)。武内薫や片山亜紀ら注目の若手陶芸作家6組の中、原菜央(1984〜)のキッチュな世界観はワンダーランドにふさわしい住人にみえる。

 「『これがなんで、陶器なん』と違和感、怒りをもった人にこそ見てほしい」

 違和感は嫌悪、いらいらにつながる。「好きなものより、嫌な方を覚えていたりする。それに対して自分の中で戦ったり、受け入れたり」。見た人の心に葛藤やしこりが生じる。そこから好きな感情が芽生えることもある。「イヤよイヤよも好き(数寄)のうちっていう。あれです」

 3匹のウサギが輪になって手をつないだ茶蓋置がある。茶の七種蓋置の一つ「三つ人形」のパロディー。仲良く遊んでいる風だが、実は互いに足を踏み合っていて、少しいじわるだ。ウサギのようなかよわいものを取り上げるのは、「かわいいといじめたくなる。ジャイアンとのび太のような関係」という。

 釉薬と土を使う絵画表現。造形はギョッと、染め付けは細密画のように。マットな青とピンク色は親しげに語りかける。さわやかなエグみとでもいうか。こんな風変わりな作風はどこから生まれるのだろう。

 子ども時分は、マンガ好きのテレビっ子。京都精華大陶芸コースを卒業後、市工業試験場(当時)や府陶工訓練校で学んだ。その確かな技術は、釉薬を自作し、伝統文様を模した緻密な絵付けに生きる。アトリエ兼住居は西陣の路地を入った古い町家。家の中は解体途中みたいに地面と木材がむき出し。いきなり大きな穴ぼこがある。「この辺、お土居のいい土があると聞いたので掘ってます」。壁にはネコが開けたという四角い穴がある。板張りの上が作業場。この脇で寝袋に入って寝るという。

 いつも嫌だなと思う方へ突っ込んでいってしまう性分。「逆境を行きます。生活は厳しいですが、10万円入ったら8万円の土を買います。期待を裏切りながらも、陶芸家を芯に、工芸の器に縛られない幅広い創作をしたい」と屈託がない。

陶芸家 原菜央

「空白があったら、ひたすら描きたいんです」という原菜央(京都市北区)

【2011年5月14日掲載】