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(22)美術家 瓜生祐子

maccha parfeit 風景画として描く食べ物とその記憶
抹茶パフェを風景画に描いた「Maccha Parfeit」(2011年)=写真:大島拓也

 断崖の続く海岸、海には岩場が点々。岬の向こうに田園が広がり、その彼方には山地が連なる。のどかな鳥瞰(かん)図だが、赤い台地がサケの切り身に見えたのをきっかけに景色は変転する。陸地は卵焼きやエビに、森は野菜に、かまぼこ、梅干しの乗ったご飯が次々と現れる。タイトルは「kouraku bento」。行楽弁当だ。瓜生祐子(1983年〜)は、風景画のように食べ物を描く。

 ふと、皿の盛りつけが風景に見えたことはないだろうか。ギャラリーPARC(京都市中京区)で7日まで開かれた個展では、行楽弁当のほか、「ピザ」や「ビスケット」「モンブラン」を、険しい山や急峻(しゅん)な渓谷、緑の田畑を俯瞰した地形図のように表現した。ぎざぎざの海岸線は歯形だったり、なだらかな丘陵はスプーンですくったアイスクリームの跡だ。

 食べ物が生々しく見えないのは、水彩画風の柔らかな色彩のためだ。アクリル絵の具で色を塗った木製パネルに目の細かい白い綿布を張り、その上から鉛筆で輪郭や断面を線描する。3層のレイヤー(階層)が、立体感を生む。画面は円形が多い。望遠鏡でのぞき込むように奥へ奥へと視線を集中していけば、味覚やそれに付随する記憶へ導かれるようだ。

 成安造形大時代は、キャンバス上に絵の具をひっくり返す抽象画などを描いた。「コントロールできない力、自然現象に興味があった。世界が流れるように存在していて、一瞬一瞬が違う、移ろいゆく日々があるのだ、ということを表現したかった」。ふと、毎日繰り返す「食べる」という行為に関心が向いた時、カレーライスが風景に見えた。「ご飯が山に、ルーは海に」。そして、皿の中にある一つの世界を見つけた。「スプーンの入れ方次第で風景がいろんな形に崩れていき、削られ、最後は消えてなくなる」。その小さな風景は、人間を通して新しい世界へ組み込まれていく。

 画面は淡い色調だが、「実はビビッドな(強い)色が布を張るとぼやけ、鉛筆で輪郭をなぞると世界が浮かび上がる」。最終的に、どんなイメージになるか分からない。その制御のつかなさは、抽象画で試みていたことにつながる。

 京都芸術センター(中京区)夏休み企画展「sweet memory−おとぎ話の王子でも」(9月11日まで 無料)では、4人の作家の一人として出品。「注文した商品が出てきた時に『ああ、山が来た』と思った」という抹茶パフェをはじめ、プリンやカップケーキなどスイーツが並んでいる。

美術家 瓜生祐子

友人との食事で、ひと口食べるたびに「ちょっと待って」と食べかけを撮影。刻々と変わる「風景」を収集するという瓜生祐子さん(京都市中京区・京都芸術センター)

【2011年8月13日掲載】