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(26)画家 小沢さかえ

惑星の0.5秒 心の風誘う光彩感
「惑星の0.5秒」(2011年)

 小沢さかえ(1980年〜)は散歩が好きだという。生まれ育った琵琶湖畔も、アトリエのある鴨川も、留学先のオーストリア・ウィーンの街もどんどん歩いた。「世界を観察しながら歩くんです。ああ、芽吹いてきたとか、風が最近強くなってきたとか」。感じたものが体を通して画面に現れてくるという。

 今春描いた「惑星の0・5秒」は、森から出てきたのか、風の中に女性が立つ。足元には草や葉、さまざまなものが色彩豊かに堆積している。「風がブワっと吹いて世界が変わる。静かだったものが一気に舞い上がった感じ」。それは象徴でもある。「人の心の中の季節も変わる。そのきっかけの風かもしれない」。女性は前を向き、強風に吹かれてもしっかりと両足で立っている。

 森や山、動物をモチーフにした物語性のある作風。内面からわき上がるイメージを画面上に紡ぎ出す。少女の指先から連なる星座、降り注ぐ落ち葉に手を伸ばすクマ。油彩でもさらりとした質感で、ガラス板に描いたように揺らめく。不思議な光彩感と色の深みが、見る人を絵の奥へ誘う。

 5年間の留学から帰国して3年たつ。帰国翌年の作品「ずっと泣きたかったんだ」に描いたのは、森の前にたたずむ少女だった。木々のつるや枝が親しげに少女へ伸びていた。その後、小沢は旺盛に描き、作品を次々と発表してきた。2010年、絹谷幸二賞奨励賞を受賞するなど着実に歩む。

 滋賀・唐崎で育ち、京都造形芸大洋画コースに入学。卒業を前に悩んだ。このまま社会に出ていいのか。日本で、京都で、大学で学んだだけで。「ほかの環境で、自分は何を感じるだろう、作品はどう見えるのだろうか。自分への興味があった」。卒業後、ドイツへ。都市を回りながら、美術大学の入学試験を受け、同じドイツ語圏のウィーンの大学へ入学した。

 だが、言葉の壁にぶつかった。孤独の森の中、絵と向き合うしかない。絵を描き、本を読み、歩いた。次第に言葉を覚え、文化を学び、習慣に触れることが新鮮になっていった。それは美術よりもっと深い、人間の根底に触れた。生活も充実していった。06年の春休み。日本での個展開催を機に、それまでの白い風景に黒が登場し、色の幅が広がった。その黒が媒介する形で鮮やかな色彩が広がり、物語性も強まっていった。

 大震災を経て価値観が揺らぐ中、小沢自身、作家としての「季節」の変化も自覚している。「自分の引き出しを確かめて次にどうつなげるか」考えている。そして、「描き続けること、描いて生きていくこと」と力強く語る。

画家 小沢さかえ

最近関心のあるものは、鉱石と霧、そして水。「琵琶湖、鴨川、ドナウ川と関係があるのかな」と語る小沢さかえ

【2011年12月10日掲載】