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(2)花見 

窓の外には見事なしだれ桜
絵・小山田徹
 まだ花粉症を発症していない銀猫です。世間では桜の花が咲き誇り、入学式とともに華やいだ気分が溢(あふ)れているのだが、我(わ)が相棒の感動屋、コヤマダ氏もしかり。数日前からそわそわして、仕事もせんとさまざまな所を散歩して、桜を見ては立ちつくし、相変わらず心酔している。しかも、げっそりとお疲れである。宴会続きの寝不足か?
 「だってさ、皆が毎日順番に飲みにやって来るんだもん」
 断れよ!  「だってさ、桜が目の前にあるんだもの」
 だって、だって…。子供かあんたは。
 今、私が寝ている所は、相棒の部屋の窓辺である。左京区にある大正生まれの古い木造アパートである。相棒はこの部屋の美しさと風合いに一目ぼれし、改装をほどこし、自分の書斎兼お客の宿泊部屋として使っている。住んではいないのである。
 この部屋の窓の外に、見事なしだれ桜がある。ちょっとくすんだ紅色のしだれで、大きさも立派な桜で、1カ月ほど咲き続ける。この桜が相棒のげっそりの原因である。
 「昨晩は皆でギター世界の歌巡りになり、気が付いたら朝になっていたなー。隣には知らない人がニコニコしてたし。楽しかったなー」
 ハー、相棒よ、おまえの経済状態考えたことあるかい? 貧乏美術家なのに。2軒もすみかを持てる身分かい?
 「ほー、朝日がピンク色だよ銀猫君。綺麗(きれい)だねー」
 モー、ホンマにトホホですわ。
 ふて寝して銀縁メガネも桜色。

【2008年4月15日掲載】