京都新聞TOP > 文化・文芸・教育アーカイブ >銀縁メガネコの風景探訪
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(4)高層マンション

満足げな顔が並ぶ巨大な人工の街だが
絵・小山田徹
 若葉のムンとした薫りに弱い銀猫です。
 先月は1カ月にわたり相棒のコヤマダ氏は千葉の新しい街「柏の葉」に仕事で滞在していた。古いゴルフ場、国有地、湿地帯が広がる地に、東京への通勤圏として、新しい駅と巨大ショッピングセンターと高層マンション群を建設し、今後3年間の内に2万人が住む新興住宅地が完成するという街である。見事に人工空間ばかり。驚くほど良くデザインされ、至れり尽くせりのさまざまなおしゃれ施設が満載である。
 「銀猫君、左京区の学生街のゴチャゴチャが好きな僕が、どうしてこんな街にきているのかな?」
 オイオイ、あんたが受けた仕事じゃないのかい! これからの街作りに芸術がどう絡むかを考えるために来てるんじゃなかったっけ?
 「銀猫君、無理…。この街、銭湯ないよ」
 何を今更ウジウジ。
 「だってさ、みんなとても豊かできれいで便利で…。満足ですって顔してるよ。さっきショッピングセンター行ったらさ、子どもたちがみんな同じ表情に見えたんだよ。なんとなく人の種類が少ない気がするんだよ。怖い…」
 ムー、気持ちは分かるが芸術家として何か示せよな。
 「あのね銀猫君、ちょっと気が付いたのだけどさ、人の表情の少ない街ってさ、写真に撮ると、どこの街だか区別つかないよね」
 ほー、見るとこ見てるね。
 「まーでも、じっくり観るといろいろ見えて来るのかな? ちょっと頑張ってみますか」

【2008年4月28日掲載】