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(7)衣替え

半袖シャツと二の腕 美術の道へ
絵・小山田徹
 ひげの手入れを欠かさぬ銀猫です。
 衣替え間近。白い洋服がちらほら。相棒のコヤマダ氏はこの時期になるといつも思い出すことがあるらしい。
 「銀猫君には今まで秘密にしていたんだけどさ」
 なぬー、オレとの仲で秘密とは…。
 「中学2年生の時のさ、美術の女の先生との話なんだけどさ。ウチの中学、美術クラブがなかったのよね。でも、ひょんなことからオレとその先生と2人で放課後、美術クラブみたいなことをすることになってさ」
 ムムー。先生何歳?
 「多分27歳ぐらいだったかな?」
 オー、ちょっと物語の始まりそうな…。
 「美術室は学校の端っこの林の中のボロボロの木造平屋。隣がカビ臭い図書室」
 完璧…。
 「そこで、2年ぐらい油絵や版画や彫刻とかの美術をたっぷりと体験させてもらったのよ。ぜいたくにも」
 ムフッ、教えてもらったの美術だけ? 
 「残念ながら、描いたり作ったりだけ…。でも、先生は黒髪の長い美しい方でさ、オレは勝手にいろんな妄想を…。先生の読んでる本とかコーヒーとか、背伸びしてこっそり読んだり飲んだり。おかげで今でも本とコーヒー、好きなのよね。そしてさ、先生の白い開襟シャツの半袖からヌッと出た白い二の腕が目に焼き付いて…。いまだに白いシャツに目が行っちゃう。まー、それがきっかけで美術の道に進むことになったのよね」
 相棒よ。それは黙ってた方が…。

【2008年5月26日掲載】