京都新聞TOP > 文化・文芸・教育アーカイブ >銀縁メガネコの風景探訪
インデックス

(13)満月の夜

人間も動物も 静かに並んで
絵・小山田徹
 夕暮れの涼しさを毎日心待ちにしている銀猫です。相棒のコヤマダ氏も昼間の暑さに疲れ気味。ただ今、夕涼みをしております。
 「銀猫君、あのさ、猫って満月の日ってソワソワしたりするのかな?」
 猫はオオカミにはなりません。
 「人間たちはさ、満月の夜にはいつもよりお酒飲んで大騒ぎしてる感じがするよね」
 そうだね、そろそろ満月だし、鴨川あたりは大変かな? 猫は大騒ぎはしないけど、満月を眺めたりはするよね。
 「おー、猫も満月見るんだ。そういえば、昔、アメリカのニューメキシコの砂漠に滞在してた時にさ…」
 いきなり砂漠の話? 「まー、聞いてよ。散歩して砂漠をさまよっていた時にさ、その日はいつもより鳥やウサギやシカなどが活発に動いてる感じだったのよ。夕暮れに、遠くまで見渡せるがけの端まで来た時、たくさんの鳥が枝にとまって、その隣にはウサギが3匹、その向こうには大きなシカが2頭たたずんでいたのよね。右側の岩の上で突然コヨーテが遠吠(とおぼ)え始めたのよ。ふと、前を見ると遠くの地平線から真っ赤で巨大な満月がゆっくり昇ってきてさ。ああ、普段は敵同士の動物たちが並んで静かに満月を見ている…。自分もその中に並んでいることが不思議な緊張を感じさせてくれたのよ」
 ウーム、その感じ、猫にもわかるなー。
 「コヨーテの遠吠えは本当に月に届きそうだったなー」
 うん、人間のばか騒ぎよりはね。

【2008年7月7日掲載】