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(16)美術とカニ

自然や風土の 魅力にはかなわない
絵・小山田徹
 猫の手ではカニを採るのは難しいと痛感している銀猫です。
 相棒のコヤマダ氏は先日、夏休みに香川県の直島という美術館のある島に家族旅行に行って来た。もちろんわたしも同行。
 「銀猫君、直島どうだった? 島全体が豪華な美術館って感じだったけどさ」
 まーね、リゾート感覚で美術を楽しむって感じかな。でもね、島の漁村や海の方が断然良かったけどね。
 「いやはや、はっきり言うね…。実はね、オレもそう感じてたんだけどね、ヘヘッ」
 ヘヘッて相棒よ、あんたは美術家としてそんなに簡単に片付けてはいけないのではないかい?
 「そうなのよ、深くてややこしい問題があるのよね。あれだけ自然や風土が魅力的な場所にさ、経済効果を理由に美術が主役になっていることが居心地が悪かったのよね。美術は自然や風土を感じる心のための道具や作法の一つであって、主役ではないのになー」
 ウーム、ややこしいなー。ところで、息子のトオキ君はどうだったのかな?
 「トオキ、海岸で磯遊びしてさ、カニを採るのにえらく興奮してたよね」
 まあ生まれて初めてのカニ採りだしね。
 「気が付いたらバケツいっぱいになってたなー」
 カニもえらい災難やったな。
 「トオキに直島で何が一番楽しかったかって聞いたらさ、カニだって」
 ウフッ、美術、自然に敗れたり!

【2008年8月04日掲載】