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(18)セミの恩返し

巨大な王様か 団体様の訪問か
絵・小山田徹
 年を重ねて、セミの声にも少し風情を感じ始めた銀猫です。
 「銀猫君、今、僕はモーレツに感動しているのよ!」
 相棒よ、唐突にどうしたのさ。
 「あのね、銀猫君。セミに恩返しされるとしたら、どんなことがいいかな?」
 おいおい、話の筋が見えないよ…。落ち着いて話してよ。
 「ごめん、興奮しててさ。えーと、さっきね、銭湯に行く途中にさ、セミの羽化しかけのやつが道に落ちてあがいているのを息子が見つけたのよ」
 夕方にすごい夕立がふってたしね、それで落ちたのかな?
 「そうみたい。びしょぬれだったしね。それを息子が助けなきゃって言ってさ、二人でそっと大きな葉っぱの下の枝につかまらせてあげたのよ」
 ほー、感心だねー。
 「それでね、銭湯入った後に見に行ったらさ、白っぽい半透明のセミが羽をのばしてぶら下がっていたのよ」
 羽を乾かしていたんだね。明日の朝には飛び立つね。
 「宝石見たいにきれいだったなー。2人で見とれてたのよ。そしたら、息子がさ、セミが恩返しに来たらどうしようと心配しはじめたのよ」
 なぜ?恩返し、いいじゃない。
 「息子はね、夜中にたくさんのセミが部屋中にびっしり来る方がいいか、部屋に入りきれないほど巨大なセミの王様が一匹来る方がいいのか悩んでたのよね」
 ムホホー、無邪気だねー。しかし、どちらもイヤかもね…。

【2008年8月18日掲載】