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(19)ブラックホール

捨てるに捨てられない モノと思い出
絵・小山田徹
 几帳面(きちょうめん)なのに、片付けられない矛盾を抱えた銀猫です。
 相棒のコヤマダ氏、新居への引っ越しを目前に、毎晩、部屋の片付けに汗だくの様子である。
 「銀猫君、部屋の中には、思いのほかたっぷりモノが隠れてるね。段ボール箱に詰めても詰めても終わらないのよね」
 相棒よ、あんたは自分の性格が分かってないんじゃないかい? あんたはね、いろんなモノを拾ってためるタイプなのよ。しかも、詰め込むのは得意。捨てる才能がない。ある意味最悪の集積人間。
 「そうかもね…。押し入れの中にびっしりといろんなモノがはまり込んでいるからね…」
 どんなモノが入っているの?
 「石、流木、昆虫標本、機械の部品、壊れたオモチャ、割れた陶器、古本、布地、世界のお土産、昔の絵、絵の具、顕微鏡、望遠鏡、洞窟(どうくつ)探検の道具、キャンプセット、レコード、古着…」
 ああー、ほとんど生活に直接必要ないモノだらけ。次の家にも持っていくつもり?
 「悩んでるのよね。特に石とか流木とか。でもね、一つ一つ手に取るとね、どこで拾ったか覚えてるのよね。思い出深いのよ。困ったなー」
 心を鬼にしないと片付かないよ。捨てよ!
 「そう簡単にいかないよ。銀猫君と一緒に拾った石もあるのよ」
 ウムー、そうなると次の家も手狭だね。
 「押し入れは時空を超えたブラックホールだね。モノも思い出もいくらでも入るよ」

【2008年8月25日掲載】