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(33)末口と元口

木が立つ状態と同じに
檜の元口。製材前の皮はぎ作業をしている(京都市伏見区)
 末口(すえくち)、元口(もとくち)は、丸太を扱う時には欠かせない名称だ。さて、末口とはどの部分かをご存じだろうか?
 丸太を伐採すると切り口が二つできる。末口は、木のテッペン、梢(こずえ)のほうをいう。反対に元口は根元側を指す。末口、元口は丸太の大きさを表し、例えば売買する時には、「長さ三メートル、末口百二十パイ(直径百二十ミリメートル)を一本」などと言う。
 木の成長を考えると末口よりも元口は赤身(密度が高い部分)が多く、太くて重い。大工さんが床柱を据え付ける時は、密度が高い元口を下にして、木が生えているのと同じ状態に立てるのが常識だ。屋根の垂木(たるき)も軒先に元口がくるようにそろえる。木が伸びる方向は、いつも天を仰いでいるわけだ。
 丸太によっては末口と元口の大きさが違う材もあり、極端に差があると大工さんは建て合わせるのに苦労する。写真は檜(ひのき)の原木で、断面は元口。末口より元口のほうがかなり大きい。まだ皮が付いており、これから製材される一本だ。
 柱を建てる際、末口と元口を逆さにすることを「逆木(さかぎ)」という。逆木は、家に不幸をもたらすとされ、大工さんらは特に気を使う。私が銘木の仕事を始めたころ、よく末口と元口を間違えて大工さんから怒られた。そんな時、ある材木屋のご主人が「末口はな、木の未来、行く末を示してるんやで。あんたの行く末も楽しみやなあ」と慰めてくれた。
 末口は、これから大きく育っていこうとしていた部分。今は天に召されたご主人は、私の年輪がどれくらい成長したか、苦笑いしながらご覧になっているような気がする。

【2004年1月27日掲載】