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| 東京の築地市場の競り場に並んだ多くのマグロ。日本はクロマグロやミナミマグロなど高級マグロの最大の消費国だ |
高級トロで知られるクロマグロ。人気のすしネタとあって、実に世界の漁獲量の約8割を日本が消費しています。そのクロマグロを大西洋で禁漁にするという案が、カタール・ドーハで13日から始まったワシントン条約締約国会議で議論されています。クロマグロ資源は、それほど枯渇しているのでしょうか。だとすると、おいしいトロはもうすぐ食べられなくなるの?
寿子 クロマグロって、回転ずしで出てくるトロのことね。どんな店でも食べられるわ。本当に減っているの?
司 主な海域別に水産庁がまとめた「国際漁業資源の現況」で現在と1970年の親マグロの資源量を比べてみると、太平洋(2万トン)では横ばいだけど、西大西洋では5万トンが1万トン以下、東大西洋・地中海では30万トンが10万トン以下に減っているよ。
寿子 まあ、すごく減っているのね。原因は何なの?
司 温暖化など地球規模の環境変化の影響もあるだろうけど、何と言っても乱獲が最大の原因だね。東大西洋では70年に1万トンくらいだった漁獲量が、最近は3万5千トンを超えている。密漁も多くて、実際は6万トン以上らしい。
寿子 でも、そんなに減っているのに、日本ではいつでも食べられるのはなぜ?
司 1990年代にオーストラリアで始まって、地中海で盛んになった「蓄養」のおかげなんだ。
寿子 養殖とは違うの?
司 小さな魚を捕まえて、海の巨大ないけすで成育させるんだ。日本の蓄養マグロ輸入量は、10年前は6千トン足らずだったのに、最近は2万5千トンほどに急増している。天然ものに比べて安いから、高級品のトロが回転ずしでも食べられるようになったんだ。
寿子 ありがたいわね。蓄養だったら、天然の資源を枯渇させなくて済むわね。
司 ところが、そうでもないんだ。蓄養のために、小さなマグロが捕獲されるようになって、資源の枯渇に拍車を掛けているんだ。それに、マグロの餌の小魚が大量に要ることも問題になっている。
寿子 困ったわね。こうなる前に、何か手を打てなかったのかしら。
司 実は、クロマグロ保護の動きは、1992年に京都で開かれたワシントン条約締約国会議(CITES)のとき、すでにあったことを覚えてるかい? 大西洋クロマグロの国際取引規制をスウェーデンが提案したんだけど、資源管理機関の大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)による管理を強化することで規制を回避したんだ。
寿子 京都会議では、アフリカゾウの象牙取引が問題になったけど、クロマグロも議論になったのね。で、今回また問題になっているということは、ICCATの管理はうまくいかなかったのね。
司 ご明察。ICCATは毎年、漁獲枠を設定しているけど、漁業者の利害を反映して、保護のために科学的に必要とされるレベルを上回っている。密漁を取り締まる権限もない。でもワシントン条約なら、規制に違反して輸出入したら各国の国内法で罰せられるから、強制力がある。
寿子 なるほどね。モナコの全面禁輸提案は採択されそう?
司 イタリア、フランスといったマグロの蓄養をしている地中海沿岸諸国が「漁師の利益を損ねる」と反対していたけど、漁業補償や移行期間を設けるという条件付きでEU(欧州連合)は賛成に回る模様。アメリカやアフリカ諸国も賛成で、条約事務局は可決に必要な「参加国の3分の2以上」を上回るのではとみている。日本などは切り崩し工作を強めているけど…。
寿子 まあ。クロマグロの保護はいいけど、トロはまた「高根の花」になるのね。今のうちにたらふく食べておこうっと。
司 おいおい。原案どおり全面禁輸になるとは限らないし、在庫もあるから急には高くならないよ。持続可能なやり方で、資源の保護と利用を両立させることがワシントン条約の趣旨なんだ。貴重な魚を少しだけ、末永くありがたく頂いていこう。
世界自然保護基金の資料
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