天満天神繁昌亭
みんなは落語を聞いたことがあるかな。一人で座布団に座り、何人もの登場人物を演じ分けて面白い話をするんだね。毎日、プロの落語が聞ける場所を「定席(じょうせき)」というんだけど、長い間、東京にしかなかったんだ。ようやく一年半前、大阪に定席「天満天神繁昌亭(てんまてんじんはんじょうてい)」(大阪市北区)ができて、今すごくにぎわっている。おなじみの「寿限無(じゅげむ)」だけじゃなく、いろんな話が楽しめるよ。
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繁昌亭が建つ場所は、大阪天満宮が境内の駐車場を、関西の落語家がつくる上方落語協会に無償で提供した。施設の建設費は企業や市民の寄付。税金は一銭も使われていない。「定席がほしい」という落語家と市民の思いが結びついたんだね。
この一帯は、かつて「天満八軒」と呼ばれ、寄席(劇場)が並んでいた土地柄。近くの天神橋筋商店街も全面支援している。
繁昌亭の前には、その日出演する落語家の名前が掲げられている。特に、最後に出演する「大トリ」と、間の休憩前に出る「中トリ」は二枚看板として別に大きく立てられているよ。
ノボリや看板が立つ天満天神繁昌亭。2階は上方落語協会の事務局。右奥が大阪天満宮(大阪市北区)
高座からは時計がみえる。それぞれの持ち時間(10分ー25分)に噺を収めるためだ。天井には寄付者の名前の入った提灯がずらり
客席は二百十六席。落語家の肉声やしぐさが分かる規模にしている。落語家が座るのは「高座」と呼ばれる一段高い場所。十七日夜に東京の落語家と開く「二人会」の準備などで訪れていた中堅の月亭遊方さん(43)は「客席の隅々まで見えて、すごくやりやすい舞台です」と話す。
客席から見て右側は下座(げざ)と呼ぶ。落語家ごとに違う登場音楽「出囃子(でばやし)」や、途中に音楽が入る「ハメモノ」と呼ばれる話(ネタ)の際、ここで三味線や太鼓、鉦(かね)などを演奏するんだ。落語家の動きに合わせられるよう、簾(すだれ)越しに舞台を見ることができる。太鼓や鉦は若手の落語家が担当するけど、三味線は専門の女性がいるんだよ。
下座の奥が楽屋。十畳余りの畳敷きで、壁を鏡が囲んでいる。ベテランが務める大トリと中トリは、座る位置も決まっているなど「楽屋のしきたり」は厳しいらしい。
楽屋。左奥が大トリの席だ。ベテランから若手まで、出番のない落語家も集まり、芸談に花が咲くことも
初代・桂春団治が愛用したとされる赤い人力車の複製が入口にある。左は桂文也さん。
公演は午後一時から三時間余りの「昼席」と、午後六時以降の「夜席」がある。昼は繁昌亭主催で、約二百人の上方落語協会員が週替わりで登場する。昼席に出る十人のうち、通常二人は色物(いろもの)と呼ばれ、漫才や手品など落語以外の芸を披露する。夜は落語家が独演会などを企画し、繁昌亭が貸す。「夜席は落語家が日程を取り合っている状態。昼も夜もお客さんはよく入っています。反応をみると、落語が初めての人が多いようです」と支配人の恩田雅和さん(58)。
特に昼は一般客のため、団体客を百人までに制限。前売り以外に、当日券も三十人分用意しているが、開演前に行列が出来て即売り切れ。連日、立ち見が出るという。
取材日の昼席に出演していた京都市出身の桂文也さん(56)=右京区在住=は「悋気(りんき)の独楽(こま)」という話で爆笑を取っていた。「繁昌亭は、それぞれの所属事務所や(師弟関係のある)一門の垣根を越えた修行の場。恐ろしい緊張感で、毎日落語をやれるという充実感があります」(おわり)
【メモ】天満天神繁昌亭は地下鉄谷町線・堺筋線「南森町駅」や、JR東西線「大阪天満宮駅」から徒歩3分。昼席料金は大人2500円(前売り2000円)、高大生1800円、小中学生1500円。夜席は内容で異なる。週末の午前10時から「朝席」として子どもや初心者向きの落語体験ツアーを行う月もある。問い合わせ繁昌亭TEL06(6352)4874
【2008年3月13日掲載】
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