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ポストマンが君の家まで

【質問】父と素直に、じっくり話したい

 ハラダ先生、こんにちは。
 家族についてのささやかな相談です。
 昨年、母を66歳で亡くしました。母が亡くなってから、知っているようで知らないことだらけだった母の人生に思いを寄せて、照れずに、もっといろんなことを語り合っておけばよかったな、と思ったりしています。
 父は、ひとり実家に残って過ごしています。今、父はどんなことを思っているのか、これまでどんな人生を歩んできたのか。父が元気なうちに、もっといろんなことを聞いておきたい、できれば孫たち(姉の子、僕の甥っ子たち)にも、一緒に受けとめてもらいたい。そんな気持ちになりながらも、全然素直に父と話すことができません。




 父との仲は決して悪くなく、むしろいい方だと思います。ですが、思えば昔から、お互い、思いを言葉にして伝え合うような家族ではありませんでした。下戸なので、晩酌しながら語り合うなんて経験もありません。無口な男同士、会話は常に2~3言で終了です(笑)。「え?急にナニ…?」という氷のような反応しか想像できません。
 勇気も手掛かりもなくもやもやしています。何かアドバイスをいただければ嬉しいです!

(42歳男性)



ハラダの答え

 お父さんに思いを伝えるなら、手紙を書いてみるのがいいんじゃないかな。思いの丈を込めた、手書きの手紙。そんなに改まったものじゃなくていい。ハラダイス相談室に送ってくれた思いを、素直に書けばいいと思う。

 ポストに投函して相手に届き、そして返事をもらうまで、何なら1週間くらいかかる手 紙のやりとり。今の時代の、特に若者たちにとっては、ちょっと笑ってしまう遅さかもしれない。

 手書きで書くとなると、下書きも必要だし、書き上げた手紙を封筒に入れて、郵便局に行って切手を買って、切手を貼ったらポストに投函して…と、手間がかかる。気に入った封筒が見つからなかったり、郵便局が開いている時間に間に合わなかったり。「まあいい、明日にしよう」と、つい先延ばしにしてしまうこともある。そんな度々起こる「待った」は、でも、伝えたいメッセージを推敲するための時間にもなる。何度かの「待った」を経てようやく、そのメッセージは相手の元に届くのだ。

 あなたのお父さんは、郵便受けに突然届く息子からの手紙に驚くかもしれない。ちょっといぶかしがりながら封を切り、便せんを開くだろう。そこに綴られたメッセージを気恥ずかしく感じるかもしれない。ひとりきりの実家で、手書きの文字を目で追いながら、じっくりとあなたの気持ちを想像して、受け取る時間を持ってくれると思う。

 手紙はとても丁寧な伝達手段だ。ある意味では効率の悪いコミュニケーションでもある。お互いに少し、自分の時間を割かないと成立しない。でも、スピードが大切な今の時代、手間のかかることを省き過ぎてはいないだろうか。タブレット端末でメッセージをやり取りする時、本当に大切にすべき時間をも切り落としているのかもしれないな、と時々思う。

 SNS上のツイートや投稿なら、返事をするのに1秒もいらない。反射的に返ってくる「いいね」で、お互いがつながっていることになってしまう。それで十分事足りてしまうことも沢山あるけれど、知らない間に、心の奥底でつながることを、恥ずかしく感じたり避けるようになってしまっているのかもしれない。

 お父さんからあなたに、なかなか返事が来なくても、気にすることはない。それもまた手紙の醍醐味だ。まあ、今回の場合、お父さんからの返事は、メールや電話でも全然いいし、しびれを切らしてあなたから電話してもいい。仲のいい親子なんだから、それもまた自然なことだ。

 手紙の次には、もっと濃密な時間が待っている。呼び出された甥っ子たちも普段とは少し違うおじいちゃんとおじさんを面白がるかな。うまくやる必要なんかない。尊敬と愛に身を任せて聞きたいことをどんどん聞けばいいのだ。
「お父さん、たまには色々思っていることを話し合おうよ。まだまだ教わんなきゃいけないことがある気もしてるんだ」

 自分のこととして想像すると、確かになかなか恥ずかしい。でも、この相談は、ものすごく大切な相談なんだと思っている。意味ある時間を成就させるための大切な相談だ。日本中で、そんな時間が持たれれば本当にいいな。素敵な相談をありがとう。お父さんを囲んでのちょっと真面目な親族会が楽しく実現することを祈っています。

「ポストマンが君の家まで」 作詞作曲:原田博行

歌詞

photo by かつらかづみ

君のこと考えてた 本当はあんまり知らないかも
僕の方は変わらず 忙しさに追われてるよ
手紙を書いてポストに出すよ
しばらくしたらポストマンが君の家まで届けてくれる
暇を見つけて読んでみてよ そしてそのうちゆっくり会おう




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 サウンドロゴ・クリエイター、シンガーソングライターにして現役高校教師の原田博行が、みんなの悩みにオリジナルソングで答えます。お悩みの応募は(haradise@mb.kyoto-np.co.jp)まで。ギター1本の語り弾き、「アイ・ラブ・ミー」なハラダ先生による明るい相談室へようこそ!

【2018年6月27日】