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最初の日

【今回の相談】就職で上京した娘の誕生日を祝いたいです。

 私は19歳になる娘の父です。男手ひとつで育ててきました。その娘が今年、高校を卒業して東京で働くことになり、4月に上京しました。
 恥ずかしい事に、父子家庭でありながら私は真面目に働いたことがなく、職を転々とする日々で、娘に苦労ばかりかけてしまっていました。ですので、娘との関係も悪く、東京に行く際も、見送ることができませんでした。
 そんな私が、ここで相談したいことがあります。それは、5月に娘の誕生日にお祝いをしたいのです。今彼女がどれほど一人で頑張っているのか、私と違い我慢強いところがあるので、毎日毎日心配でなりません。今まで祝ってあげられなかった分、今祝ってあげたいのです。
 このような重たい内容ですが、何か一言でもアドバイスを頂けたら幸いです。

50代男性より

ハラダの答え

 「お祝いをしてあげたい」という気持ちに嘘がないなら、誰に反対される必要があるのだろう。精一杯お祝いしてあげて下さい。

 でも、その気持ちは、あなたの望む形では娘さんに受け取っては貰えないかもしれない。もしそうなったとしても、その理由をあなたはよく分かっているでしょう。あなたは彼女の期待を裏切り続けてきた父親だったかもしれない。お金のことで苦労をかけたのかもしれない。言うべき言葉をかけてこなかったかもしれない。父親らしいことを何一つできなかったかもしれない。そしてそれを補ってくれる母親もいなかった。

 それでも彼女は19歳になった。東京に出て仕事を始めた。あなたから見て、我慢強い頑張り屋さんに育った。もう、一人前になったと社会は彼女を受け入れた。しっかりは掴んでいなかったのかもしれないけれど、やっぱり、あなたの手を離れて巣立ったのだ。あなたが育てた娘さんだ。

 僕が教師として出会ってきた、高校3年生は1万人くらい。みんなすごく大人でまだまだ子供でした。家庭の問題で傷ついて、上手く人生を歩めなくなっている時期の生徒もいました。愛されたいと望んでいる自分をコントロールできなくて、愛されている確信が持てなくて、苦しんでいたりします。それでも、時間は彼女や彼らを次の世界へと運んでいきます。足踏みしているようでも、物事は少しずつ進んでいきます。予想していなかった友達と出会ったり、打ち込める何かを見つけたり、自分が誰かを愛することを学んだり。交通事故のように僕と出会い、影響を受けて巣立って行く生徒もいます。でも、それぞれの親御さんとの関係には遠く及ばない。僕ら教師と生徒は、卒業と同時に毎週会っていた関係から、もうなかなか会えない関係に突然変わってしまうのです。

 ギクシャクしていようが、一生お父さんは娘さんのお父さんです。どんなに話していなくても、会えなくなっても。だからこそ「今、祝ってあげたい」という気持ちを本当に大切にしてほしいと思います。 

 人間というのは、上手く愛することも、上手く愛されることも、本当に苦手なんだなと思います。それでもいいじゃないですか。不器用でかっこ悪くてもいいじゃないですか。どんな結末だったとしても、今伝えたいと思っている素敵な気持ちに正直であればいいのです。一緒に携えてしまっているかもしれない下心や言い訳や甘い期待は、現実の前では無残にあなたを傷つけるかもしれない。それでも、真っ直ぐな父親としての思いが真ん中にあるのなら、その出来事はきっと未来を変えると思います。期待通りとは行かなくても、彼女に何かが伝わるのではないかなと思います。どんな父親だったとしても、父親であることに変わりはない。あなたが彼女に伝える言葉は、本当は彼女が何年も前に聞きたかった言葉かもしれない。今は「遅すぎる」と思える言葉も、もう少し先の未来から見たら、今言うべき言葉かもしれないのです。

 あなたの娘さんへの愛が、その勇気で、娘さんに伝わりますように。心から応援しています。

「最初の日」 作詞作曲:原田博行

歌詞

photo by かつらかづみ

君は僕の自慢で 僕は君が大切
そんなこと君は とてもじゃないけど信じないかな
揺れる ロウソク
「ごめんね」「ありがとう」「愛している」
白々しく遅すぎる言葉
でも君に伝えるね 
未来から見れば 
今日が一番最初の日だから




◇       ◇       ◇

 サウンドロゴ・クリエイター、シンガーソングライターにして現役高校教師の原田博行が、みんなの悩みにオリジナルソングで答えます。お悩みの応募は(haradise@mb.kyoto-np.co.jp)まで。ギター1本の語り弾き、「アイ・ラブ・ミー」なハラダ先生による明るい相談室へようこそ!

【2018年4月27日】