新型インフルエンザの患者が急増している。重症化を防ぎ、死者を減らすにはワクチンが有効だが、厚生労働省は優先接種対象者を定めており、一般は順次、11月以降に実施される。一方で接種が間に合わず感染する人も出ると予測され、重症化が懸念される子どもや妊婦は特に注意が必要だ。個人や家庭で実践できる対策はあるのか、医療現場から報告する。
子どもの場合 急性脳症の兆候意識 容体変化を親が把握
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| インフルエンザにかかった子どもが重症化する兆候の例 |
インフルエンザによる学級閉鎖が京都や滋賀の学校でも大幅に増加している。しかし、就学前の子どもや小中学生らを対象にした新型インフルエンザのワクチン接種は12月以降となり、遅い。重症化を防ぐ有効な手だてと言われるだけに、気がかりな面が多い。
小児科医である京都府医師会の森洋一会長は「今後、流行拡大は避けられない。ワクチン接種が実施されるまでの期間が一つの正念場になる。どこまで重症化を防ぎ、命を守るかが喫緊の課題だ」と警戒を強める。
手洗いやうがいなどの徹底で、ある程度の予防は可能だが、感染をシャットアウトするのは難しい。発熱やせき、鼻水など、インフルエンザが疑われる症状が現れたら、病院や診療所で受診することになるが、重症化を防ぐ上で親が忘れがちなポイントがある。森会長は「いつ、どのような症状が出たのか。できればメモをとり、正確な情報を伝えてほしい。あいまいだと、その後の治療や検査に影響する」と話す。
新型インフルエンザは、従来の季節性とは異なり、急に症状が悪化する例が報告されている。京都市立病院(京都市中京区)の清水恒広感染症内科部長(小児科医)は「持病がない人が肺炎に至るケースもあった。ただ肺炎は、早期に適切な治療を受ければ、悪化せずに済む場合が多い。しかし、急性脳症となれば対応が難しい」と語る。
14日には東京都の男児(4)と愛知県の高校2年男子(16)が新型インフルエンザによる脳症で死亡したと発表された。また滋賀県でも、先月21日に新型インフルエンザにかかった小学1年男児(7)が脳症を発症して死亡している。
国立病院機構・京都医療センター(伏見区)の秋山祐一小児科医長は「新型インフルエンザにかかった子どもは、季節性よりも、急性脳症を発症しやすい印象を受ける。インフルエンザと診断される前に、突然けいれんを起こして、意識障害に至った例も出ているので要注意だ」と語る。
同センターでは、9月29日、京都市内の4歳男児が意識障害で救急搬送された。インフルエンザ脳症の疑いが濃かったが、幸いにして一命を取りとめた。
秋山医長は「急性脳症は、とにかく症状が進むのが早い。インフルエンザ発症時は子どもから目を離さないのが大切だ。発症時の子どもがすやすやと寝ることはない。逆に夜間に脳症が起こると、よく寝ているようにも見える。8時間に1回は起こし、受け応えができるのか、きちんと歩けるかを確認してほしい」と呼びかける。
新型インフルエンザによる急性脳症 厚生労働省の「新型インフルエンザによる入院患者数の概況」(10月15日時点)では、入院患者2146人のうち、5〜14歳は1309人で全体の6割以上を占める。特に懸念されるのは、10代前後の急性脳症だ。急性脳症を発症して入院した患者65人のうち5〜14歳は54人で8割以上になる。
妊婦の場合 日本産科婦人科学会が「Q&A」 まず電話 → 一般医療機関を受診
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| 受診の流れ(妊婦の場合) |
妊婦や授乳中の女性の対応について、日本産科婦人科学会がまとめた「Q&A」を基に、学会常務理事の小西郁生・京都大医学部教授に要点を聞き、まとめた。
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妊婦は新型インフルエンザに感染すると、重症化しやすいとされるため、京都では11月中旬以降、ワクチン接種が優先的に始まる。学会は「安全かつ有効と考えられている」との見解だ。
同様の方法で作られている季節性インフルエンザワクチンが、妊婦への接種が一般化している米国で大きな問題が起きておらず、胎児へのマイナスの影響も観察されていないことが根拠。WHO(世界保健機関)も接種はメリットの方がはるかに大きいと考えているからだ。
妊婦がワクチンを受けると、出生児も数カ月間インフルエンザになりにくいことも証明されているという。
妊婦は38度以上の発熱や鼻水、鼻づまり、のどの痛み、せきが出たら、感染を疑う。その際、48時間以内の抗インフルエンザ薬(タミフル)服用が重症化防止に最も効果があるとする。感染者と接触した場合も同様に対応する。小西教授は「感染が疑わしければ、早期に薬を投与する。検査をしても初期には陽性と出ないこともあるので」という。
受診に際して、まずは内科など近くの一般医療機関に連絡する=グラフ参照。受け入れが難しければ産婦人科医が対応するが、いずれにしろ事前に電話し、妊婦であることと症状を伝える。受診時はマスクを着用する。
タミフル投与は胎児に対しても安全だという報告がある。治療の場合は1日2回各1錠を5日間、予防投与なら1日1錠を10日間としている。
出産後に感染したら赤ちゃんをしっかり観察し、発症の早期発見に努める。感染の目安として▽活気がない▽母乳・ミルクの飲みが悪い▽呼吸回数が多くて苦しそう▽呼吸が止まったよう▽発熱がある▽せき・鼻水・鼻づまりがある−などの症状がみられたら、小児科医を受診する。
母親が感染しても、授乳は構わない。母乳を介しての感染例はない。ただ、接触による感染対策は必要で、マスクを着用し、せきを控える。「Q&A」では、可能なら自宅で過ごす部屋を別にしたり、搾乳した母乳を第三者に与えてもらうという対応を勧める。
小西教授は「インフルエンザに感染したときの対応について、普段からかかりつけの産婦人科医に確認を」とアドバイスする。
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