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東亜セイコー会長 齋藤優さん(79)

電子や電気技術開発一筋 進化が企業のテーマに
齋藤優さん

−創業の経緯はどうでしたか。

 「大学を卒業して就職した親類の会社が当時、不安定な電圧を安定させる自動定電圧装置の開発に取り組んでいましたが、資金不足で中止となりました。その開発を成功させる自信があったので、退職して1952年から個人企業で取り組みを続けました」
 「装置を完成させて京都大の研究室に売り込みましたが、その精度の高さが理論上は不可能だと信用してもらえなかった。机上論と現実との違いを説明して理解が得られ買ってもらうとともに、その教授らの協力で多数の研究室への売り込みにも成功しました」
 「一方で、資金もないのに大手企業3社とテレビで広告を出しました。その結果、松下電器産業から受注があったほか、大阪テレビから大量の注文をもらいました。ただ、受注がなければ宣伝費を払えない状態で、われながら思い切ったことをしたと思います」

−設立した会社の社名を変更されましたね。

 「1959年に個人企業から株式会社の精工電機製作所を設立しましたが、68年に社員が交通事故で死亡事故を起こしました。会社のトップとして、初めて味わった試練でした。この事故の処理を終えてから、今の社名に変更しました」

−同時期に技術重視に体質転換しましたね。

 「大量生産で、同じものだけを作っていても進歩がないと感じました。それで、単一の機械やソフトなどの企画開発と製造のできる技術集団の会社に改革しました。その中で生まれたのがゴルフボールの自動貸玉機でした。その後も、生産設備機械や電子計測器、電子基板の設計や製造をはじめ、電子や電気技術、産業ソフトの開発などに取り組んでいます」

−独自の「社内小切手制度」も導入しましたね。

 「社内の部門間での経費負担から部品の受け渡しに至るまで、この小切手を発行して社内取引を行い、社員の経営能力を高める制度でした。現在、この考え方をさらに進化させ小切手を省いて、コンピューターで各部門の経費や利益を算出する独自ソフトを開発して導入しました。当初、社員に戸惑いがありましたが、次第に慣れて業績の向上に役立っています」

−経営方針や理念を聞かせてください。

 「地球上の生物は種が滅び、進化した新しい種が誕生してきました。企業も、この道理に沿って絶えず進化しないと滅びざるを得ないと考え、この進化を企業テーマに掲げています。開発型に徹した経営も進化の理念に基づくものです」
 「資金の余裕と時間の余裕、心の余裕のバランスが大切で、どれが多くても少なくても正しい判断ができない。このバランスがよいと、初めて進化に加速がついてくる。約30年前から続けている無借金経営も、借金に費やす経費や精神的な負担をなくすことで、余裕ができ本来の業務に徹すことができるとの判断からです」

−生まれ育った地域への思い入れが強いですね。

 「大山崎町教委の教育委員を32年させていただいていますが、経験から感じているのは子どもを1人育てるのに多額の費用が必要で、地域全体に支えられてこそ育てることができているということです。自分も、地域に育てられたと感謝していますし、その恩返しをするのは当然だと思っています」
<企業メモ>
 本社・大山崎町下植野二階下。資本金2000万円。従業員約50人。年間売上高は約10億円。社長は二男齋藤真也さん(41)。ゲームソフト企画開発関連会社「トーセ」(東証・大証一部上場)の会長も兼務する。

[2008年2月1日掲載]