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ヴェリテ稲本社長 稲本收一さん(56)

内装・金属仕上げ請け負う 個人住宅管理も準備進める
稲本收一さん

−創業の経緯を教えてください。

 「頑張った分が報酬に転嫁されないため、30歳の時にサラリーマンを辞めて中学の先輩がしていた内装工事を手伝いました。優れた先輩に仕込まれて3年ほどで、独り立ちできるまでになりました。わたしは思いこむといちずな方で、前の会社の後輩と2人で仕事を始めました」

−その仕事の内容を話してください。

 「学校やビル、工場、病院、デパートなどの何もない空間から天井や間仕切り、床を造る内装・金属仕上げ工事を専門にしています。大手建設会社から直接、下請けで受注していますが、大手の仕事を請け負えるようになるまで10年ほどかかりました。職人の世界にあって、言われたことを忠実に守るサラリーマンあがりの異色の集団というのが注目を集めました。職人仲間を通じた人脈が広がって大手の現場監督らにも気に入られ、資材調達も信用で協力してもらえて順調に軌道に乗りました」

−建設業界は苦境が続いている。

 「仕事が減ったことで同業者間の競走が厳しくなり、値下げ合戦が始まって悪循環の繰り返し。スーパーゼネコンと言われる最大手が一人勝ちのような状態です。下請けは安くないと仕事がもらえず、無理をして原価割れで請け負うところも出始めるなど限界に来ています。特に京都市内は景観条例の制定で一層厳しく、業界では『京都には仕事がない』とまでいわれ、地価の下落も招いています。感覚的ですが、2010年度以降から少しずつ上向くと期待しています」

−乙訓地域に対する思いを教えてください。

 「向日市寺戸出身で、借家から会社を始めて今の場所に移ってきました。親族や長年のつきあいがある知人の多くが住む、この地域から離れることは考えられない。現在、新たに地元の個人住宅の維持管理全般を引き受ける『よろず屋』的な仕事を始める準備を進めていますが、地域事情を知っているからできると思っています」

−これからの地域があるべき姿を話してください。

 「向日市は少し自意識の強い特異な地域だと思います。駅前の商店街で新たな店が開店すると『地の人の店か』との言葉が聞かれる。新たな店舗は商工会や商店街の組織に加わってくれませんが、無意識に自分たちから『よそ者』との見方で壁をつくっているのではないかと思います。現在、向日市工業会の会長をさせていただいていますが、地元以外の方々も積極的に理事などに加わっていただいている。新たな意識を入れて、まちの将来を真剣に考えていかないといけないと思っています」
<企業メモ>
 本社・向日市森本町石田。当初の稲本建工を、2003年に株式会社とし、現在の名称に変更した。資本金は1千万円。パートを含む社員は5人で、ほかに専属の職人約20人がいる。年間の総売上高は約4億2千万円。

[2008年9月30日掲載]