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日本総合研究所関西経済研究センター所長 吉本澄司氏

製造業誘致 雇用の器拡大を
よしもと・きよし 東京大卒。1977年に三井銀行入行。同行総合研究所国内経済調査室長、三井住友銀行金融調査室長などを経て、2003年10月から現職。大阪大経済学研究科客員教授。著書に「金利で経済がわかる」(ダイヤモンド社、共著)など。静岡県出身。52歳。
 関西の主要企業の2007年3月期決算がほぼ出そろった。総合電機や電子部品を中心に過去最高益の企業が相次ぐなど、戦後最長の景気拡大を裏付ける結果となった。一方で今期は、米国経済の失速や消費の伸び悩みなど、懸念材料も少なくない。日本総合研究所関西経済研究センターの吉本澄司所長に関西経済の課題と展望を聞いた。

 −関西企業の07年3月期は好決算が相次いだ。今期の展望は。

 「好決算は当初心配された米国経済と中国経済の減速が起こらず、輸出が予想以上に好調だったことが大きい。ただ、今期はそうした懸念が現実になるかもしれない。関西の米国と中国向けの輸出額は1−3月期に入って伸び率が鈍化した。数量の鈍化はさらに顕著だ。この落ち込みがどの程度に収まるかが鍵になる。IT(情報技術)バブルが崩壊した01年並みに米国向け輸出が落ち込むと、さすがに景気に響くだろう」
 「とはいえ、米国の個人消費は今もって底堅い。仮に景気が減速しても米国は金融政策による調整の余地が大きく、ソフトランディングできるとみている」

 −国内の個人消費動向はどう見るか。

 「消費回復は結局、個人の懐具合による。一人あたり名目賃金が昨年にようやくプラスに転じるなど、景気拡大の流れが個人に波及しつつあるのは間違いない。ただ、消費者物価もやや上昇しており、実質ベースの賃金はそれほど伸びていない。定率減税の段階的廃止や社会保険料の引き上げもあり、景気ほどには個人の懐具合は良くない」

 −本格回復の条件は。

 「高度成長期や1970−80年代と違い、業績が世界経済に大きく依存する現代では、企業が大幅賃上げを行うことは難しい。短期的には人手不足で初任給を引き上げるなどの待遇向上も見られるが、大きな枠組みは変わらないだろう。輸出がおかしくなって景気が腰折れしない限り、個人消費はゆっくりとだが徐々に回復する。月並みだがそれを待つしかない」

 −関西経済がさらに飛躍するにはどのような方策が必要か。

 「関西は四国・中国地方からの人口流入が大きい一方、関東や中部へは流出超過が続いている。失業率も関東と中部に比べて高い。つまり、せっかく人を集めても域内で雇い切れていないといえる。やはり、製造業をもっと誘致して雇用の器を大きくする必要がある」
 「製造業が集積して人が増えれば、非製造業も取引先や顧客が増えて潤う。企業誘致では自治体による立地助成も大事だが、進出に必要な行政手続きを簡素化することも重要だ。関西は幅広い業種の中小企業が集積しているので、その特性を生かすのも一策だろう」
【2007年5月19日掲載】