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国際電気通信基礎技術研究所社長 平田康夫氏

学研都市で連携、成果発信へ
ひらた・やすお 京都大大学院修士課程修了。1967年、国際電信電話に入社し、衛星通信の研究に従事。94年に同社取締役。2001年にKDDI取締役執行役員専務、03年にKDDI研究所会長。07年6月から現職。大阪市出身。65歳。
 関西学研都市を代表する研究機関として知られる国際電気通信基礎技術研究所(ATR・京都府精華町)。音声認識や脳科学などで大学並みの基礎研究を手がける一方、民間出資の株式会社であるために収益とのバランスをどう取るかという経営課題も抱える。6月に就任した平田康夫社長に今後の戦略を聞いた。

 −どのような研究機関にしていきたいか。

 「設立の原点に帰り、情報通信分野で世界に成果を発信できる研究機関にしていきたい。研究者にはいい論文やいい特許をどんどん出してもらいたい。一方で研究費は国関連の資金が多い。成果を社会にどのように還元するかも頭に入れながら研究する必要がある」
 「研究は駅伝に例えられると思う。一世代で大きな成果が生まれるというよりも、研究者がそれぞれの区間でいい成績を残し、次の世代に引き継いでいくものだ。そうした面からも次世代の人材育成も重要視している」

 −基礎研究と収益性のバランスをどう取るか。

 「株式会社でありながら基礎研究を手がける組織は世界にも例がない。それで株主還元を求められても難しいが、赤字を出さないのは大前提だ。2年前に達成した黒字を維持していく。一方でいい研究をするには資金がいる。国の研究資金を獲得できるよう、ゆくゆくは社会に役立つ前向きな研究をどんどん提案していきたい。民間企業との連携にも力を入れ、資金をもっと受け入れたい」

 −研究成果を事業化する子会社や孫会社を設けている。

 「研究の出口戦略は重要だ。成果が社会に役立つと研究者も元気になるし、周囲の刺激にもなる。2004年に立ち上げた子会社のATRプロモーションズは、売上高も3億円ぐらいにまで増えた。とはいえ、現状はまだまだ。もっと成果をPRしていく必要がある。マーケットを持っている企業との連携も大事で、音声認識を手がける孫会社は東証マザーズ上場企業の出資を受け入れた」

 −大阪・梅田北ヤードの再開発ビル「ナレッジ・キャピタル(知的創造拠点)」にも参加を計画していると聞く。

 「ATRで開発したロボットを現地に持ち込み、一般の人に慣れ親しんでもらう仕掛けを考えている。梅田は集客という面からも最適な場所だと思う。そこで得られた意見を生かし、さらに改良を加えていきたい」

 −学研都市における役割はどう考えるか。

 「学研都市に拠点を構える情報通信研究機構や奈良先端科学技術大学院大、同志社大ともっと連携し、研究成果を発信していきたい。一般の人にATRをもっと身近に感じてもらうことも大事だ。毎年11月に研究発表会を開いているが、今年は一般の人がロボットや脳科学などの研究に触れる仕掛けを考える」
【2007年8月4日掲載】