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中小企業基盤整備機構近畿支部長 井上泉氏

中小の魅力伝えて人材育成
いのうえ・いずみ 九州大工学部卒。1975年、地域振興整備公団採用。本部参事、名古屋支部長などを経て2004年7月から中小企業基盤整備機構に転籍。北陸支部長などを経て06年9月から現職。同機構業務統括役も兼務。長崎県出身。62歳。
 大手企業を中心に緩やかな景気回復が続く中、原油高などの不安要因で中小企業の厳しさは増している。関西地区の中小企業とベンチャーの現状と課題を中小企業基盤整備機構近畿支部長の井上泉氏に聞いた。

 −関西の中小企業の景況をどうみているか。

 「二〇〇七年は雇用が回復し、輸出入もよかったが、〇八年に入ってからは株安や原油高、米サブプライム住宅ローン問題、建築着工数の減少などで状況が激変した。その中で滋賀は業況はよく、湖南から京都にかけては注目している地域だが、関西全体ではよい企業と悪い企業がはっきり分かれている。原材料の高騰分も価格転嫁できていない。シャープなどの大型工場の進出もすそ野の広がりはまだみえず、中小企業の限界は近い」

 −中小企業に重点的に支援している点は。

 「経営指導の専門家の派遣などをしている。業況がよい企業はさらに伸ばし、厳しい企業はてこ入れが必要だ。また懸念しているのは、中小企業の事業が継続できず廃業につながることだ。特に大阪は廃業率が高い。そのため中小企業の事業承継支援にも力を入れ、ファンドも設立している。新年度は事業承継コーディネーターも増員する」  「地域活性化のために農林水産物などの地域資源から新商品を生み出す地域資源活用プログラムでは事業化を指導する専門家も配置している。これまで近畿の認定は二十七件で、京表具の裏打ち技術を活用したプリント和紙によるサーフボードの製造販売事業など京都では四件、滋賀では一件を認定した。また企業同士の提携を支援する新連携事業も推進している。滋賀では電子技術と陶芸技術を融合した明かりが揺らぐ信楽焼照明陶器なども誕生している」

 −京都大桂キャンパスなど各地で運営する起業支援施設(インキュベーター)の状況は。

 「最近は施設の入居者だけでなく、地域を取り込んで仕事をつくるビジネスインキュベーションコーディネーターによる勉強会を広げている。京大桂ベンチャープラザは中小企業にとって敷居が高かったが、教授の論文などを分かりやすく説明するコーディネート事業も始めた。大学との連携が強まったため、好評で継続したい」

 −今後、中小やベンチャー企業が乗り越えるべき課題とは。

 「人材と後継者の育成が大切で中小企業の魅力を学生に訴えることも必要だ。経営支援プラザUMEDA(大阪市)では関西社会人大学院連合と協力して多くの研修メニューを提供している。また不測の事態につなぎの無担保融資が可能になる『経営セーフティ共済』もある。有利な情報をつかみ、さまざまな機関や制度をうまく活用することが重要だ」
【2008年2月16日掲載】