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中性子生む加速器小型に

京都ニュートロニクス(京都市下京区)
協力会社で開発中の加速器。原子力規制庁の許可を得て試験運転し、年内の実用化を目指している(神奈川県相模原市)
協力会社で開発中の加速器。原子力規制庁の許可を得て試験運転し、年内の実用化を目指している(神奈川県相模原市)
  医薬品や産業用素材の開発、非破壊検査など幅広い分野で活用が期待される中性子を発生させる、安価で小型の新しい加速器を開発している。試作機はすでに完成し、2015年中に放射線診断薬の原料製造装置として実用化を目指している。

 大学や専門機関で原子力を研究していた亀井敬史会長が13年7月に会社設立した。きっかけは、11年の東京電力福島第1原発事故だった。原子力への信頼が失墜する中、「使い勝手がよく、経済的な加速器を今こそつくらなければならない」と思い至った。発起人には堀場製作所を創業した堀場雅夫氏も名を連ねた。

 中性子は原子核を構成する粒子。電荷を持たないため物質を透過するほか、特定の物質に照射すると異なる物質に変化する。現在、中性子を発生させる装置は、核分裂反応を起こす原子炉が主流となっている。一方、加速器は核分裂ではなく、陽子を物質に衝突させることで中性子を発生させるが、装置が巨大で、数百億から数千億円の開発費が必要という。

 そこで亀井会長は、加速器の駆動装置「高電圧パルス発生器」に、ロームと科学技術振興機構(JST)が開発した次世代半導体材料のシリコンカーバイド(SiC、炭化ケイ素)を使用した。SiCは高電圧に耐えられることなどから、原子炉並みに大量の中性子を発生させることができるという。回路設計や電圧のバランス調整などで工夫を重ね、試作機を完成させた。

 駆動装置に真空管を使っていた従来の加速器は、最長1600メートルに及ぶが、SiCの場合は6メートル程度まで小型化した。価格も数十分の一に抑え、産業界での普及に道を開いた。

 本格的な事業化に向け、昨年9月には高電圧パルス発生器の製造子会社を東日本大震災で大きな被害を受けた福島県いわき市に設立した。亀井会長は「新産業を創出して雇用を生み出し、震災からの復興を支援したい」と語る。今後、中性子でがん細胞だけを破壊する医用機器の開発を進める方針で、「大学や企業、自治体と連携し、国内外のさまざまな市場で中性子の応用技術を広めたい」と意気込んでいる。

亀井 敬史(かめい・たかし)会長

 京都大工学研究科原子核工学専攻単位取得認定退学。工学博士。ローム、京都大、国際高等研究所などを経て、2013年に京都ニュートロニクス設立、社長就任。14年から現職。堺市出身。京都市北区在住。44歳。

【2015年02月02日掲載】