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BNC基幹に試薬開発

ビークル(京都市山科区)
マンションの一室に設けている研究施設。BNCを活用し、研究用試薬などの開発に取り組む(京都市山科区)
マンションの一室に設けている研究施設。BNCを活用し、研究用試薬などの開発に取り組む(京都市山科区)
 B型肝炎ウイルスの外郭を模倣した粒子「バイオナノカプセル(BNC)」を基幹技術に医薬品関連業界で飛躍を目指す。BNCは、脂質膜にタンパク質の突起が浮かんだ構造で、中は空っぽになっている。直径は70ナノ(10億分の1)メートル。岡山、神戸、大阪、慶応の4大学による共同研究で、遺伝子組み換え酵母からタンパク質を発現させて作製した。日米欧で関連特許が成立している。

 BNCはヒトの肝細胞に誘導できることなどから薬剤運搬や研究用試薬としてのバイオセンサー、病気を見つける抗体など幅広い利用が見込めるという。郷保正社長は「資金不足で研究開発が遅れているテーマもあるが、BNCは医薬品開発にもつながる大きな可能性を秘めている」と話す。

 BNCを事業化する大学発ベンチャーとして2002年に発足した。BNCは、画期的な薬剤運搬素材として期待を集め、当初は抗がん剤を封入したBNCを開発したが、売り手が見つからず頓挫した。2007年からは、製薬会社で研究職だった郷社長が経営を引き継ぎ、核酸の運搬用として開発したが、今度は核酸自体の問題から断念した。

 その後、郷社長は自宅に近い現在地に本社を移し、BNCを使って新たなビジネスに乗り出した。現在の主力製品は、バイオセンサーに使う試薬。加工したBNCを混ぜた液体を血液などに反応させ、がんなどの抗原を検出する。BNCの表面に110本並ぶ突起に、信号となる酵素と抗原に結びつく抗体を付けたため、感度が高く、反応も見やすいという。10月初旬には新製品も発売した。

 通常のB型肝炎ウイルスの検査では見過ごされるという変異ウイルスも対象にした診断薬に利用するため、検査会社と共同研究を進めている。ほかにもBNCの突起の先端部分がヒトの肝細胞に反応する特性を生かし、「今も多くの患者がいる肝炎の慢性化を防ぐため、効果的なワクチンの開発にもつなげたい」と夢を描く。

 当面は試薬を中心に事業拡大を図る戦略で、15年3月期は売上高3千万円を目指す。郷社長は「京都に本社を移転し、成長に向けた第2段階に入った。医薬品開発の研究支援を通じて人々の健康に貢献していきたい」と意気込む。

郷保正(ごう・やすまさ)社長

 名古屋大大学院農学研究科修了。米国立衛生研究所を経て、1982年、塩野義製薬入社。2004年、長浜バイオ大特任教授。ベンチャーファンドの仲介を受け、2007年から現職。京都市左京区在住。62歳。

【2014年10月27日掲載】