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自転車に豪華さと機能性

MBC(京都市下京区)
安土城をイメージした自転車「AZ7」(手前)と織田信長の愛馬「小鹿毛」を表現したミニベロ「CK2」(京都市下京区)
安土城をイメージした自転車「AZ7」(手前)と織田信長の愛馬「小鹿毛」を表現したミニベロ「CK2」(京都市下京区)

 金や朱、黒を使い、戦国の覇者、織田信長が近江に築いた安土城をイメージしたスポーツタイプの自転車「AZ7」(6万9120円)と、信長の愛馬・小鹿毛(こかげ)から着想を得た小型の「CK2」(5万9400円)。自転車製造販売「MBC」(京都市下京区)が創業後初めて発売した自転車だ。伊澤慎一社長(36)は「信長が生きた安土桃山時代は、革新や活力があり、そんな思いを車体に込めた。自転車の街乗りを楽しんでほしい」。

 ニートや障害者を対象に就職支援の事業をしていた伊澤社長は、取り組みの中で、社会に送り出す難しさを痛感。手を使うものづくりの仕事は「多くの人にできるのでは」と思うようになった。

 自転車製造は、京都市内を走る自転車を見て考えついた。自転車の国内シェアは海外で生産される1万円以下のものが大半を占め、残りが愛好家に支持される数十万円以上のスポーツタイプと二極化が進んでいる。中間帯の価格を埋める製品を投入すれば商機があるのでは、との思惑もあった。

 とはいえ、ものづくりの経験はなかった。周囲からは「素人にできるわけがない」と反対されたが、逆に闘志に火がついた。

 出資者を募る中で知り合った投資家に自転車整備士を紹介してもらったほか、大阪の自転車メーカーが利用する中国の組立工場を借りることができた。

 古都を走る上で何が必要か、議論を重ねた。見た目は豪華絢爛(ごうかけんらん)にした一方で、機能面は使い勝手を重視した。車体は、衝撃に強いクロムモリブデン鋼を採用。空気を入れるバルブは、スポーツ車に使われるフランス式ではなく、一般的な英国式にした。

 通信販売が中心で、届け方にも心を砕く。通販で購入すると前輪が外れた状態で届くが、同社は、すぐに乗れるよう前輪をつけた状態で配送するようにした。不要な段ボールも引き取るなど細やかな心配りをする。4月に販売を開始して3カ月が過ぎた。「デザインがすてきで乗りやすい。自転車に乗るのが楽しくなった」などと購入客から評判も上々という。ネット販売のほか、京都市内では新風館(中京区)の自転車店、東京でも2店舗で取り扱う。「『安かろう、悪かろう』ではない自転車を提供することで、自転車業界に新しい風を吹き込みたい」と意気込む。

伊澤慎一(いざわ・しんいち)社長

 京都大経済学部卒。銀行員などを経て、2008年9月に人材育成を手がける「Think&Act」を設立。14年6月にMBCを創業した。社名の「M」は、多様な価値を認め合うを意味するマルチバーサルの頭文字。福井県坂井市出身。

【2015年07月06日掲載】