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バイオ医薬品、低コストに

糖鎖工学研究所(京都市下京区)
バイオ医薬品の開発に向け、糖タンパク質を研究する社員(京都市下京区・糖鎖工学研究所)
バイオ医薬品の開発に向け、糖タンパク質を研究する社員(京都市下京区・糖鎖工学研究所)
 近年期待が高まっているバイオ医薬品の主成分である糖タンパク質を化学合成する技術を持つ。糖タンパク質はタンパク質に糖が連なった糖鎖が付いたもので、糖鎖は体内でタンパク質を水に溶けやすくしたり、安定させたりする役割を果たす。糖タンパク質を化学合成すれば、現在主流となっているマウス細胞から製造する方法に比べ、コストは最大100分の1程度に抑えられるという。朝井洋明社長は「世界的にも糖タンパク質を化学合成できるところはほかにない。いち早く医薬品開発につなげたい」と話す。

 糖鎖の重要性は以前から認識されていたが、構造が複雑で多様なことから、機能の解明や産業利用が進んでいなかった。梶原康宏大阪大大学院教授が横浜市立大時代に鶏卵の卵黄から糖鎖を取り出し、ヒト型糖鎖をつくる技術を開発。朝井社長は2002年に梶原教授と糖鎖の共同研究を始めた。09年に当時勤めていた大塚化学内に糖鎖工学研究所が立ち上がり、同年により広い研究場所を求めて、現在本社を置く京都市下京区の京都リサーチパークに移転した。

 販売されているバイオ医薬品は、ほとんどがマウス細胞からつくられている。動物細来であるため糖鎖のコントロールができず、精製を繰り返す必要があるのでコストがかかるという。

 朝井社長らは、鶏卵から糖鎖だけを取り出し、ヒト型糖鎖を大量生産し、タンパク質に糖鎖を自由に付加する技術を確立した。開発した糖鎖は100種類以上にのぼる。動物細胞ではつくれないものもあり、「難病に対応した薬など新しいバイオ医薬品を製造できる可能性がある」と話す。医薬品メーカーからの受託研究や共同研究を進めており、肝がんなど病気を特定して独自に研究している素材もある。

 課題は「ヒトで安全性を確認すること」と朝井社長。共同研究などの複数案件で来年にも臨床試験が始まる予定だ。社員約20人で研究を積み重ね、実際の糖タンパク質の製造は外部に委託している。「ベンチャーで名前もあまり知られていない会社だが、化学合成でバイオ医薬品をつくることができると知ってもらいたい」と意気込んでいる。

朝井洋明(あさい・ひろあき)社長

 鹿児島大大学院理学研究科修了。大塚化学で研究開発や営業を担当。2009年社内に設立された糖鎖工学研究所所長に就任。12年の分社化に伴い社長になった。13年に経営陣による自社買収(MBO)で独立した。鹿児島県出身。京都市下京区在住。53歳。

【2015年05月04日掲載】