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[12]暮らしや社会を支える

立命館大情報理工学部教授 仲谷善雄氏
交通情報などさまざまな情報を管理する高速道路情報システム (西日本高速道路株式会社提供)
交通情報などさまざまな情報を管理する高速道路情報システム (西日本高速道路株式会社提供)

 現代社会は情報システムなしには考えられません。このように言うと当たり前だと思われるかもしれませんが、それではいったいどのような情報システムがどこで使われているのでしょうか。このように改めて問うと、答えられる人は少ないのではないでしょうか。

 例えば、交通関係ではさまざまな情報システムが使われています。列車の運行管理、電車に乗るときの自動発券機や予約システム、一般道路での交通流の監視や信号制御、航空機の飛行場および航空路での監視など、数え上げればきりがありません。当然、交通以外に多くの情報システムがあります。以下では、特に高速道路交通を支え得る情報システムを取り上げて、その種類の多さを実感していただきたいと思います。

高速道の安全守るネットワーク

 道路情報システムには自動料金収受システム(ETC)、交通情報システム、道路設備監視制御システム、情報ネットワークシステムなどがあります。

 ETCは、高速道路の出入り口で停車せずに料金の支払いができるシステムで、国内のどの高速道路会社でも共通したカード。車載器、無線装置で利用できます。実は国内で統一されたETCを運用している国は珍しいのです。日本のETCは、車の所有者と料金の支払者を別にできる仕組み、けん引車と被けん引車をひとつの車両と判別する仕組み、無線で個人情報や料金情報などの秘密情報を安全に送受信するための仕組み、交通量が多い時間帯と少ない時間帯とで料金を柔軟に変更できる仕組みなど、高度なシステムです。

 交通情報については、交通量と速度を計測するために、電流を流したコイルの上を車両が通過すると電流が変化する原理を使った計測装置(トラフィックカウンター、通称トラカン)が用いられます。道路下に二つのコイルを離して埋設することで、それらの間を通過する時間で速度が計算でき、二つのコイルの両方を同時に通過すると大型車両だと判断できます。ただこのトラカンは鉄骨が多い橋や高架部、トンネル部には使えないので、代わりに超音波を用いた速度計や、カメラの動画像を画像処理技術で解析する装置が導入されています。このようにして計測された交通量や速度、台数の情報は中央に集計され、管制センターで常時監視され、道路情報板、ハイウエーラジオ、ハイウエーテレホンなどから提供されています。交通情報は日本という国単位でも集計され、VICS(ヴィックス)と呼ばれるサービスとして、5分ごとの渋滞、事故、駐車場状況、工事などの情報が無線を通じてカーナビなどから提供されています。VICSは世界的にも優れた、先進的な情報提供サービスです。

 道路では照明、道路情報板、カメラ、トラカン、非常電話、トンネル内の諸設備(ジェットファン、火災報知機、水噴霧設備)、電源、光ファイバーなどの設備が運用されています。これらが正しく稼働しているかどうかを常時監視しているのが道路設備監視制御システムです。トンネルで火災が発生した場合には、センサーで感知し、入り口付近の情報板で注意喚起するとともに、最寄りのカメラで状況をとらえ、トンネル内の避難誘導を行うとともに、水噴霧装置で消火します。これらの作業は人とシステムが協調して行います。

 情報の収集や提供には光ファイバーなどの有線系と無線系で構成される情報ネットワークが欠かせません。高速道路や国道の下には光ファイバーが埋設され、日本中を結んでいます。最近では、ある地域の情報システムが障害に遭ったときに、隣の地域のシステムが代わりの役目を果たせるような切り替えの仕組みがネットワークに設けられています。

 車の自動運転が注目されていますが、道路側の情報システムも高度化されており、両者を合わせて高度道路交通システム(ITS)と呼んでいます。

なかたに・よしお

 1958年生まれ。81年大阪大人間科学部人間科学科卒業(社会心理学)。防災などの社会システムに人工知能やヒューマンインタフェース技術を適用する研究に従事。三菱電機中央研究所などを経て2004年から立命館大情報理工学部教授。14年から同学部長。

【2018年03月14日掲載】