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(1)エコカー

EV用電池で覇権競う HVと両面作戦、増産急ぐ
GSユアサが三菱自動車のEV「アイミーブ」に供給するリチウムイオン電池。シェア獲得へ増産競争が繰り広げられている(京都市南区・GSユアサ本社)

 「エコカー市場の動きは驚くべき速さ。増産対応に猶予はない」。昨年11月、栗東市へのリチウムイオン電池工場新設を打ち出したジーエス・ユアサコーポレーションの依田誠社長は、急拡大する市場への挑戦に張りつめた表情を見せた。

 新工場は、同電池の搭載で昨夏先陣を切って三菱自動車が発売した電気自動車(EV)「アイミーブ」普及の鍵だった。走行時に二酸化炭素を出さないEVは政府の購入支援策も追い風に初年度2千台を完売。今春から一般販売も始め、2011年度の1万5千台までは京都本社と草津市の合弁工場の増強で賄うが、12年度の3万台体制に対応するため昨秋中に新工場確保に乗り出す必要があった。

 増産を急ぐ背景には激しい覇権争いがある。調査会社の富士経済(東京都)は15年の次世代車の世界市場規模を08年の6倍超の約12兆円と予測。日産自動車は10年中のEV発売に向けNECと日米欧で電池工場を建設、ハイブリッド車(HV)で先行するトヨタ自動車もパナソニック、三洋電機と組んで12年にEVを投入する。電池は走行性能を左右し、EV価格の約半分とされるため自動車・電機メーカーが陣営を組んで開発を競う形だ。

 ただEV普及には充電スタンドなど基盤整備が不可欠で、「本当に次の本命か予測がつかない」(依田社長)のも本音。HV用電池でもホンダと組んで福知山市の工場で今秋に生産を開始する予定で、両面作戦の設備投資総額は今後3年間で約500億円と重い。

 エコカー普及で国内首位の鉛蓄電池事業が先細る一方、三菱自が今秋始める仏プジョー・シトロエングループ(PSA)へのEV供給で欧州市場の可能性が広がる側面もある。エコカー技術を軸に三菱自とPSA、スズキと独フォルクスワーゲンの提携交渉が進み、世界の業界地図が塗り変わろうとしている。

 「環境意識の高まりで市場は一変した」。パソコン用などの精密小型モーターで世界首位の日本電産は車載用でもトップを狙う。永守重信社長は昨年8月、欧州の自動車大手からクラッチ用など総額1千億円の契約を取り付けた。従来の油圧モーターに比べサイズは半分、消費電力は3分の1と優れていても1年前まで系列の壁に阻まれていた。

 駆動用モーターも開発し、アジアや北米の新興EVメーカーとの商談が進む。ガソリン車でも燃費向上のため高効率モーターの引き合いが増えており、「置き換え需要は10兆円規模。シェア50%を狙う」。

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 「エコ」が世界経済の主役になりつつある。ポスト京都議定書の国際合意を待たずして急速に立ち上がるエコ市場の獲得競争を京滋企業を中心に追う。=5回掲載の予定です

リチウムイオン電池

 携帯電話など小型電子機器に使われている二次電池。現行ハイブリッド車搭載のニッケル水素電池に比べ重量や体積を半分以下に抑えられ、低燃費で充電1回で走行距離が長いが、単価は高い。

【2010年1月7日掲載】