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(上)造水

ハイテク素材で淡水化 年10%市場成長見込む
海水の塩分を取り除き飲料水に変える逆浸透膜。世界シェア首位の日東電工では世界各地で建設が進む淡水化プラント向けにフル生産が続く(草津市・日東電工滋賀事業所)

 工場内に長さ約1メートルの円筒が整然と並ぶ。液晶用光学フィルムなどの素材メーカー、日東電工滋賀事業所(草津市)。円筒は海水や生活排水を飲み水に変える「逆浸透膜」だ。滋賀事業所はその主要生産拠点で、水不足や水源汚染が深刻な世界各地の淡水化プラント向けに出荷している。

 「大型プラントの建設案件は右肩上がりだ」。菊岡稔メンブレン(水処理膜)事業部長は力を込める。逆浸透膜の市場規模は現在600億円。経済成長や人口増に伴って世界の水需要は拡大し続けており、今後も毎年10%の市場成長が続くとみる。

 逆浸透膜は水に溶けた塩や金属を直径0・1〜10ナノメートル(ナノは10億分の1)の穴で除き、きれいな水を取り出す超ハイテク素材。その穴は電子顕微鏡でも判別できないほど小さい。

 同社は2001年以降、南欧やアフリカ、中東など約40カ国に逆浸透膜を納入した。その膜がつくり出す水の量は現在、世界中で1日570万トン以上という。1人が1日に使う水を200リットルとすれば、2800万人分の水を賄っている計算だ。

 需要拡大の一方、受注獲得競争は激しさを増している。同社は逆浸透膜の供給に加え、各国プラント会社と連携して稼働後の保守サービスや技術支援を行う事業モデルを確立。海水淡水化向け逆浸透膜で世界シェア首位の実績や、海水を蒸発する手法より安い運用コストをPRし、受注拡大を狙う。

 今年は豪州で処理量が1日44万トンの大型淡水化プラント向けに逆浸透膜を大量受注するなど需要は力強く、滋賀事業所はフル操業での生産が続く。「もはや海水や排水を利用しない限り、世界の水需要は満たせない」(菊岡事業部長)。事業部門の今期売上高は前期より40億円増の210億円を目指す。

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 世界で水不足が深刻化している。海水の淡水化や上下水処理など世界の「水ビジネス」の市場規模は急速に拡大しており、経済産業省は25年に87兆円に達すると予測する。独自の技術を武器に、巨大市場に挑む京滋の企業や事業所をリポートする。
=3回掲載します

逆浸透

 濃度の薄い液体が濃い液体に流れ込む「浸透」の逆の現象で、人工的に圧力を加えて発生させる。塩分濃度の高い海水を淡水化する際に使われ、逆浸透膜はろ紙の役割を果たす。日東電工の製品は海水の塩分を99・8%除去できる。

【2010年10月13日掲載】