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(3)蓄電

「家庭で大容量」道開く 普及へ規制や業界の壁
リチウムイオン電池の充放電特性を解析するアイケイエスのグループ社員。大容量蓄電池を安全に使う技術はスマートグリッド実現に欠かせない(京都府久御山町)

 冷蔵庫のような大きな装置の前で、技術者がパソコンに映し出される数字を読み取っていく。調べているのはリチウムイオン電池に充放電を繰り返したときの状態変化だ。

 「家庭の消費電力を丸ごと蓄える大容量蓄電池の分野でもリチウムイオン電池が主役になる」。京都市中京区のベンチャー企業・アイケイエスは、得意の電子制御技術を生かして大容量蓄電池を安全に使うための研究を進めている。

 今や携帯電話などの電子機器に欠かせないリチウムイオン電池。最大の特長は蓄電能力の高さにある。太陽光パネルなどと組み合わせれば夜間や雨天時にも自然エネルギーを使える。スマートグリッド技術で各家庭の蓄電池をコントロールできれば、余った電力を他の家庭に融通できる。

 「すごい電池だが、主流にするには管理の技術が必要と感じた」。同社の今井尊史社長は、初めて手にした16年前を振り返る。高性能だが、過充電や過放電で発火する恐れがある。携帯電話などは充放電の制御回路で安全性が確保されているが、大電力を蓄える装置では小さな異常が惨事につながりかねない。

 「電池の電圧・温度変化の波形や挙動から異常を見つけ、危険を事前に知らせる。その予測ができるようになれば蓄電池の普及につながる」(今井社長)。すでに蓄電池を無線で遠隔監視するシステムが完成。今後、実証実験でシステムの精度を高める予定だ。

 電気自動車(EV)用リチウムイオン電池の開発でリードするGSユアサは、EV用をベースに家庭や工場向けの蓄電池システム開発を急ぐ。

 EV自体を蓄電池としても使えるが、現在は車から外部へ電力を流せないよう規制されている。夜間の安い電気を昼間に売ると電力会社の損失になるなど「技術以前に業界の壁や規制が蓄電池普及の足かせになっている」。産業電池電源事業部の山口雅英新エネルギー本部長は指摘する。

 福島第1原発の事故を受け、エネルギー政策は見直しが必要になった。「何のために蓄電池を使い、どんな社会をつくるのか。使う側の革新が進めば蓄電池の普及も一気に進むはず」。山口本部長は強調する。

リチウムイオン電池

 蓄電池の一種。鉛電池やニッケルカドミウム電池に比べて大幅に小型・軽量化ができ、携帯電話やパソコンなどのデジタル機器をはじめ、電気自動車にも採用されている。放電ロスの少なさも特長で、蓄えた電力の90%超を取り出せるが、価格の高さが普及に向けた課題になっている。

【2011年4月21日掲載】