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現代の食 化学で支える 添加物製造の世界的拠点

第一工業製薬滋賀工場(東近江市五個荘日吉町)
第一工業製薬の食品添加物(写真上)
包装ラインで箱に詰められるショ糖脂肪酸エステル(東近江市・第一工業製薬滋賀工場=写真下)

 小売店の店頭に並ぶ弁当やカップめん、チョコレート、スナック菓子。食生活に欠かせない加工食品の多くには、食感を変えたり製品を安定させる食品添加物「乳化剤」が使用されている。中でも、植物由来の砂糖と食用油脂を原料とする「ショ糖脂肪酸エステル(SE)」は高価だが、安全やおいしさへの消費者ニーズの高まりを受け多くの食品加工メーカーが採用している。第一工業製薬の滋賀工場は世界有数のSE製造拠点だ。

 工場のある五個荘は鈴鹿山系からの地下水が流れ、町の水路にはニシキゴイが泳ぐ地域。同工場はその地下水を利用して食品添加物や水処理剤、界面活性剤などを製造している。特に主力となるSEは、1968年に同社が食品への使用を考慮し、原料を水で溶かして作る製法を開発したもので、水の豊かな地域性が生み出した商品ともいえる。

 SEの性能は乳化だけでなく油の酸化抑制や結晶化抑制など幅広い。チョコレートの油脂が分離して固まるのを防いだり、コメを炊く際に使えば時間がたっても固まりにくくなるほか、パンやケーキをふわっとした食感にしておいしくさせることもできるという。食品以外でも口紅のつや出しや歯磨き用の起泡剤などとしても利用可能。同社ではさまざまなニーズにこたえるため、性能の異なるSE11種類を用意し、取引先別のカスタマイズも行う。

 滋賀工場内のSE工場は1995年に新設。7階建ての内部には反応釜や精製槽などが並ぶ。原料タンクから移した砂糖と食用油脂を釜で反応させ、年間約3万6000トンもの大量の地下水で余分な物質を除去するなどして精製。その後、乾燥させると、白い粉体のSEができあがる。

 箱詰めの工程では、作業環境と品質の管理を徹底するため、入り口にエアシャワーを設置して外部から隔離された包装ラインで専属の従業員が作業にあたる。

 製造中に使用した水は処理施設で浄化して大半を再利用しており、関口恒工場長(54)は「琵琶湖のそばの工場として水の扱いにも万全を期している」と話す。

 環境、省エネへの取り組みにも力を入れる。現在約3億9000万円かけ、天然ガスを燃料とする発電と排熱回収を合わせた「ガスコージェネレーションシステム」の設置工事中で、3月には稼働する予定。工場内の電力はほとんどまかなえるようになり、排熱は製造工程に利用する。またボイラーの燃料も重油から天然ガスに切り替えるなど、二酸化炭素排出量は年間35%削減され、燃料費などの経費も年間約2600万円の削減を計画している。原油価格が高止まりしていることから、計画以上のコストダウンも期待している。

 化学製品は表舞台には出てこない商品だが「なければ現代生活が成り立たない。生産することに誇りを持っている」と関口工場長は強調する。

[2007年1月28日掲載]
第一工業製薬滋賀工場
 1969年、完全子会社の日本レブロス工場として操業開始。2001年に第一工業製薬滋賀工場となる。敷地面積約10万1000平方メートル、建物面積約1万5000平方メートル。従業員136人。JR能登川駅から南東に1・5キロ。