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ルシアン竜王レース 滋賀県竜王町鏡

和の感性 繊細デザイン インナー中心、海外向けも
ルシアン竜王レースで製造されたレース(写真上)
1000本以上の針でレースを縫う刺しゅう機(滋賀県竜王町・ルシアン竜王レース=写真下)

 女性用インナーに使われるレース。「あっ、これかわいい」と直感させるデザインを糸だけで表現する繊細な商品だ。ルシアン竜王レースは、そんな女心をつかむレースの国内有数の生産工場として、親会社のルシアンはもちろん、ワコールやトリンプなど多くの大手女性用下着メーカーに商品を納入している。

 生産するレースは、網状の布「チュール」に刺しゅうを施したチュールレースと刺しゅう部分だけのケミカルレースの2種類。どちらも溶解性の化学繊維を土台に機械で刺しゅうを縫いつけた後、お湯に浸けて化学繊維を溶かし製品化する。

 製品の価値を決めるのは、デザイナーが描いた原画をレースにするための設計図。刺しゅう機などはデータに基づき動くので、設計図を作るパンチング室は工場の頭脳とも呼ばれる。

 6倍に拡大した原画を輪郭だけの状態に描き直してボードに設置し、パンチャーと呼ばれる技術者が、針の運び方を決めるマウスのような機器で縫い始める場所や一針の長さ、縫い方などを指定、コンピューターにデータを入力していく。デザイナーが求める花や幾何学模様などの図柄をどう実現させるかは、パンチャーの腕の見せ所。一見必要のないところまで細かく針を運んだり、逆に少ない運針で仕上げた設計図には、パンチャーの個性が現れる。

 デザイナーや顧客はレースに「高級感」「かわいらしさ」など感覚的なものを求めるため、「長年の経験で得た技術の中から最適なものを選んでいく」と、パンチャー歴40年の今井栄一さん(58)。一方、ベテランだけでは「時代の感性について行けない」ともいい、パンチャー4人のうち今井さん以外の3人は20代の若手だ。若手リーダー格の谷口章人課長代理(26)は「最先端のデザインにふれ、形にできることが仕事の魅力」と、休日も売り場視察など流行チェックを欠かさない。

 ベテランの技術と若手の感性が混じり合って設計図が出来上がると、サンプルを製作、デザイナーとの確認作業を繰り返し、製造工程に入る。必要な量の糸を仕分け、刺しゅう機にセット。計6台ある刺しゅう機は1台ごとに1040−1072本の針がついている。針の前の布枠に縦約1メートル10センチ、横約60メートルの巨大な布を設置すると、布枠は設計図に合わせて細かく動き、1000本以上の針が次々と刺しゅうを縫い上げていく。大量生産用の機械とはいえ、表糸と裏糸の張り具合など微調整は職人技が支えている。

 完成したレースは厳しい検査を経て出荷、メーカー側が刺しゅう部分を裁断しブラジャーなどに縫いつけて市場に出る。

 レースも国際競争の波にさらされている。ルシアンも中国にレース工場を持つが、竜王では昨年から海外向けの国産新ブランド「かすみ」の製作を始めた。一辺が1ミリに満たないコの字型の刺しゅうがびっしりと縫いつけられたデザインなどが特徴で、世界中の女性を魅了させるレース作りを目指している。

 安井勇二郎レース事業部生産部長(45)は「繊細なデザインに日本の感性を詰め込んだレースは、竜王だからできる」と胸を張る。

[2007年5月27日掲載]
ルシアン竜王レース
 1961年にルシアンが出資するレース製造会社として操業し、2005年完全子会社化。従業員41人。敷地面積3万7000平方メートル、建物面積6100平方メートル。製品の85%がインナー向け。JR野洲駅から北東へ車で約10分。